steve perry_the season

もう既にお聴きになられている方も多いであろう、1ヶ月ほど前にリリースされたスティーヴ・ペリーのクリスマス・アルバム。去年〜今年はコロナの影響なのだろう、心なしかこの手のシーズン・アルバムが少ないみたい。でもこの傾向、自分は案外、心地よく感じている。いつの頃からか、ファン・サーヴィスという大儀をかざして安易にX'masアルバムを作るヤツが増えてきて…。オリジナルのホリデイ・ソングを書いたり、トラディショナルに新たな解釈を加えた作品なら大いに歓迎だけど、実際のところ、定番曲をお決まりのパターンで、というイージーなモノが多く。すぐにモノを斜に見てしまう自分には、それこそファン・サーヴィスに託つけた荒稼ぎと、ネタ切れ隠しの場繋ぎ作品としか思えない。まぁ、ベテランになるとモチベーションが保てず、歌いたいモノがなくなっちゃうんだろうな。

そういう意味では、スティーヴ・ペリーのコレも、全曲スタンダードでオリジナルはナシ。演奏もピアノ・コンボとオーケストラの演奏、…と思いきや、実際はヴィニー・カリウタが4曲ドラムを叩いた以外は、すべてピアノとシンセ、プログラムでの制作。スティーヴと、スティーヴの前作『TRACES』に参加していたダラス・クルーズの2人が、ほぼすべてのサウンドメイクを手掛けている。

正直、コンピュターやプログラムで、ココまで生っぽい音が作れることに改めてビックリ。でもこれじゃー夢がないというか、サンタが自分の親だと知った時の寂しさ、というか、ちょっとガッカリしたことは否めない。でも一方で、スティーヴの美声がトラディショナルな聖歌にフィットしていて、なるほど企画的にはアリだなぁ、なんて思ったりも。中途半端にポップ・テイストのX'mas アルバムにせず、ジャズ・コンボっぽいスタイルにしたのは正解だ。ただサスガに、今更 聖歌隊を従えて<Auld Lang Syne(蛍の光)>なんか歌われてもネェ…

スティーヴらしいのは、モータウン・ソングっぽくクロい仕上がりの<Santa Claus Is Coming To Town(サンタが街にやってくる)>、2年前にシングルとして出していたゴスペル調の<Silver Bells>あたり。古いスタンダードでも、このように歌い手の個性を生かしたアレンジなら、素直に納得できるし、手垢のついた素材にだってトライする価値が生まれる。

それでもやっぱり、これだけのシグネイチャー・ヴォイスがあるのだから、もっと積極的にオリジナルを歌ってほしいところ。仮にカヴァーであっても、音楽的なコンセプトさえシッカリしていれば、きっとイイ歌が歌えるはずである。もしかして未だにジャーニーの呪縛に囚われているのは、ファンよりむしろ、スティーヴ自身なのかもしれないな…。