acid pink
renaja@grapefruitemoon

久々に超ドタバタな一日で、未唯mieさん『ACID PINK』@Blues Alley Japan 、久々の Renaja『PARIS BLUE』@三軒茶屋Grapefruit Moon のダブル・ヘッダー。もちろんコロナ禍初のライヴ2本立てで、感染拡大抑圧を実感した。ところが朝からデヴィッド・ラズリーの訃報でアタフタ。家を出たら首都高大渋滞で、未唯mieさんライヴに大遅刻 でも皆さんにご配慮戴き、入替制の2部も時間が許すギリギリまで。結果、1st後半と2nd前半トータルでワン・ステージ観られるコトに相成った。BAJトップT氏には、「あれ〜ッ、さっきもいなかった?」と爆笑されてしまったが…

でも、1st 終演後のバックステージで、未唯mieさんに「よろしかったら2ndも…」とお誘いを受け、中座しなければならないにも関わらず、即その言葉に飛びついてしまったほど、この『ACID PINK』、メチャクチャ面白かったのだ。

サポート陣はアレンジを担当した笹路正徳(kyd)を中心に、渡嘉敷祐一(ds)土方隆行(g)川崎哲平(b) 宮崎裕介(kyd)本間将人(sax,kyd)大滝裕子(cho)。セットは全曲ピンク・レディーのレパートリーで、前半は超お馴染みのヒット曲、後半はちょいとコアな楽曲、という構成。ピンク・レディー楽曲を大胆アレンジして…、というと、毎年のお正月公演として定着した『PINK LADY NIGHT』があるけれど、ポップスと純邦楽を柱にしながら、世界中のあらゆるジャンルの音楽をゴッタ煮にして、ロックやポップ・スタンダードの名フレーズをユーモアいっぱいに摘み喰いしていくアチラに比べ、こちらはアシッド系単色に染め上げられていてモア・デンジャラス、モア・アダルト。衣装合わせしてないのに、全員がクロの衣装になったのは、それだけメンバーの息が合っている証拠と言える。特に、深いスリットに胸元露わな未唯mieさん、セクシーでヤバかったわ…

そもそもピンク・レディーの楽曲というのは、歌メロと演奏のリズムが一体化して、それと踊りの振り付けが連動している。『PINK LADY NIGHT』のアレンジというのは、実は奇抜な変拍子を使っていたとしても、基本的にその原則を崩していないのだ。ところが『ACID PINK』は完全にビートを解放していて、ウネウネと蠢くようなグルーヴがしなり続ける。その特徴的なビートの上で、ヴォーカルだけが歌メロをキープしている感覚だ。それこそ従来の譜割り、リズムのキメなんて、120%無視。だからピンクのハッピを着た元・親衛隊たちが、『PINK LADY NIGHT』では辿々しいながらも何とか振りをつけて踊っているのに、『ACID PINK』ではずっと着席状態。グルーヴには乗れても、フリを付けるべきキメが存在しないのだ。音楽はカッコ良いのに、フリ付けが機能しない…。そんなモンモンとした気持ちになった熱狂的ファンがいたかもしれない。

でもこの思い切った手法は、今の、そしてこれからの未唯mieさんにとって、極めて重要なチャレンジだったと思う。今までもマンスリー・ライヴなどで、手を替え品を替え、いろいろなトライをやってきた彼女。自分が知る限り、目立った失敗などひとつもなかったが、何でもソツなくこなしてしまう実力の持ち主だけに、彼女が将来を賭けて推進していく気になるような手応えは、まだ得られてない気がする。要は かなり思い切ったコトをやらないと現状は打破できないし、新しいファンも開拓できない、ってコト。良くも悪くもパブリック・イメージができ上がってしまっているだけに苦労は多いだろう。でもこんなに頻繁にライヴをやっているのに、制作物がしばらく途絶えたままというのは、やはり本気で追求すべきスタイルが見つかっていないのでは?、なんて勘ぐっている。でももしそうなら、『ACID PINK』はそのキッカケになる可能性があるな。そんなコトを思いながら、次へ目的地へクルマを走らせた。

で、Grapefruit MoonでRenaja。13~14年前に自分がCDデビューへ導いたユニットだけど、ここしばらくは横浜でのライヴが続き、そのままコロナ・パンデミックに突入してしまったため、自分が彼らのフル編成に近いライヴを観るのは4年ぶりくらい。ルネちゃんがゲストで歌うようなライヴは観ているけど、それでも2年以上の間は空いている。演奏陣は、ヴォーカルのRenaja(ルネージャ)、新井現詞(g,cho)以下、寺田正彦(kyd) 吉池千秋(b)堂地誠人(sax, perc, cho)。

でも彼らは全然変わっていなかった。それこそ、ビックリするほどに、何も変わっていない。演奏の世界観もほとんどそのままだし、ヴォーカル・スタイルも完成されている。これはある意味、賛辞の対象になるコトだ。けれど彼女たちは、決してコレで成功しているワケではない。趣味レヴェルでやり続けていくなら結構だが、もっと多くの人に自分たちの音楽を聴いて欲しいと思うなら、果たしてここまでイイのか?という疑問が残った。そういう意味では、井上陽水<少年時代>という意外なカヴァーに、Renajaらしいアレンジと心根が感じられて興味深かったな。近年世間で増えている安易なアコースティック・カヴァーはとっくに飽きられていると思うが、らしさを湛えたまま、より多くの人にコミットできるのは、きっとこうした楽曲なのだろう。半分身内みたいなモノなので、敢えて厳しいコトをいうけど、好きな楽曲を ただ好きなように歌っているだけなら、そこに進化はないよ。

あぁ、キャリアが全然違うとはいえ、スタンスがまったく対象的な2本のライヴを観た1日だったな。

acid pink setlist