bobby hutcherson

昨年ユニバーサル・ジャズが展開していた【入手困難盤復活!! 名門レーベルに残されたJAZZ秘蔵の名盤】シリーズから、前々回ポストのジョン・リー&ジェリー・ブラウンに続いて、ボビー・ハッチャーソンの75年作を。ハッチャーソンといえばブルーノート・レーベル生え抜きのヴァイブ奏者で、初録音もブルーノートなら(1961年のジャッキー・マクリーン)なら、初リーダー作(65年)もブルーノート。そして77年まで移籍もせず、年2作ペースでアルバムを出していた。特に70年代に入ってからは、徐々にクロスオーヴァー指向となり、いわゆるLA-BNの中核となっていく。

ただ作品数が多く、それに関連してかアルバム毎にニュー・ソウル寄り、ラテン・ジャズ寄り、モダン寄りと微妙に路線を変えてくるので、何処から手を出したらイイのか、少々分かりにくかった。当然ジャズ・ファンからは敬遠されがち。レア・グルーヴ以降は、次作『MONTARA』のタイトル曲が盛んにサンプリングされ、ザ・ルーツのブルーノート・リミックス・プロジェクト『THE NEW GROOVE』(96年)に使われたり、マッドリブがカヴァー。日本ではスチャダラパー <サマージャム ’95>の元ネタとして有名になった。他にもサンタナのカヴァーでお馴染みのティト・プエンテ作<Oye Como Va>、ラテン・ジャズ・クラシック<La Malanga>が入っていて、すっかりハッチャーソン代表作として歴史が塗り替えられている。

でも参加メンバーやアルバムとしてのバランス感で選びたいなら、『MONTARA』より半年ほど早く録音された『LINGER LAIN』の方がフィットするかも。ジェリー・ピータース(kyd)、チャック・レイニー(b)、ハーヴィー・メイスン(ds)、ボビー・ホール(per)、アーニー・ワッツ(sax)、ウォーターズ(cho)という LA-BN作品常連たちが名を連ね、アレンジがハッチャーソンとピータース。ギターはジョン・ロウィンだが、これが完全にデヴィッド・T・ウォーカー風で、きっとスケジュールが合わずにトラ的に起用された感が強い。収録曲にもスタイリスティックスのカヴァー<People Make The World Go Round(愛の世界)>、ジャズ系のみならずロック・アーティストにも取り上げられる<The Theme From "M*A*S*H">が含まれ、それ以外はハッチャーソンとピータースの楽曲が固める。ハッチャーソンはヴィブラフォンではなく、主にウッドで出来ているマリンバをプレイ。ゆったりファンキーなサウンドと相まって、柔らかめのマレット・プレイを聴かせてくれるのだ。

ハッチャーソンには、ペイジス<Sailor'S Song>をカヴァーしたラテン・フュージョン作もあるが、今まで何処から入ったらいいのか…?と躊躇していた方は、まずはこの周辺から、廉価盤があるうちに。