mcdonald giles

オリジナル・キング・クリムゾンの2人、マクドナルド&ジャイルズによる唯一のアルバム『McDONALD & GILES』が、98年以来となる紙ジャケ再発。…というワケで、買い直すべきか否か、と聴き直している。オリジナル・リリースは1970年。つまり、イアン・マクドナルドとマイケル・ジャイルズは、かの伝説的名盤『IN THE COURT OF THE CRIMSON KING(クリムゾン・キングの宮殿)』発表直後に、さっさとグループを脱退してしまったのだ。何でも、1ヶ月に及んだ過酷なUSツアーがナイーヴな2人を疲弊させ、ロバート・フリップに脱退を通告させたとか。


元より急造バンドだったクリムゾンなので、2人はフリップとの微妙な音楽性の違いを感じていたそう。そこでフリップは、自分が抜けるから2人がバンドに残るよう説得したというのも有名な話。しかし彼らは申し出を断り、このアルバムを制作することに。もっともフリップはサックスにはすぐメル・コリンズを見つけたが、ドラムは後任が探せず、次作『IN THE WAKE OF POSEIDON(ポセイドンのめざめ)』にはマイケル・ジャイルズがそのまま参加するコトになるのだが…。

サックス、鍵盤、ギターとメイン楽器の多くを担うイアン、ドラム&パーカッションとヴォーカルのマイケルに加え、弟のピーター・ジャイルズ(b)、そしてゲストにスティーヴ・ウィンウッド(kyd)が参加。でもまぁ、このアルバムの第一義は、イアン・マクドナルドの才能を堪能するアルバムだな。11分に及ぶオープニングの<Suite In C(組曲ハ長調)>、そしてアナログB面を全部使った組曲<Birdman>、どちらもイアンの作品(Birdmanの詞はピート・シンフィールド)で、ともすれば冗長になりそうな穏やかな楽曲を、見事な構成でまとめている。『宮殿』前にできていたという<Flight Of The Ibis>は、『ポセイドン』に収録された<Cadence And Cascade>の原型。他にも、初期クリムゾンの静の部分が実はイアンの持ち味だったのだ、と気づかされる部分がアチコチに。意外にもメル・コリンズ張りにバリバリとファンキーなサックスを吹いたりもする。だから無謀に思えるフリップの申し出も、決して卑屈になってのヤケクソ発言ではなく、彼は彼でイアンの才能を密かに羨んでいたのだろう。

マイケルのドラムが相変わらず手数が多く、スゴイことは言うまでもない。でもマクドナルド&ジャイルズでは、元々の曲想が牧歌的だから、『宮殿』のプレイほどのインパクトはない。大曲<Birdman>のクライマックスなんて、まるでピンク・フロイド<原子心母>だし(発表は同年)。でも唯一ジャイルズが提供した<Tomorrow's People - The Children Of Today>には、ドラム・ブレイク的なカッコ良さがある。サブスクではこの曲がダントツに再生回数が多いのも、きっと違った角度から注目されているから、と思われる。

ちなみに今回の再発盤、当初は昨年12月に出る予定だったが、制作上のトラブルで約1ヶ月延期された。その釈明が発売元であるWOWOW ENTERTAINMENT のサイトに掲載されている。これを読むと、制作側の苦労が偲ばれるが、まぁ、どれほどのマニアたちがそこまで要求しているのか? 自分も紙ジャケ愛好家のハシクレではあるが、例えば日本盤オビのミスプリまでそのまま残せ!とは思わないし、ジャケの閉じはA式でもE式でもあまり気にならない。今回の再発で言えば、アーティスト・ネームが英国仕様のグリーンなのが魅力だが、要は見た目の雰囲気でアナログ気分が味わえればOK。そこまで再現性にこだわるなら、オリジナル・アナログ買えばイイぢゃん、と思っちゃう。それより大事なのは音源でしょ? 聴くべきボートラでも追加されてりゃ買い直しも検討するが、近年のハコモノみたいに一度聴きゃー充分、って程度のボートラなら、それこそサブスクで間に合わせちゃう。メーカーも、そういうとこ、フィジカルとサブスクで差別化すりゃーイイのにね。

で、このマクドナルド&ジャイルスは、何と2001年リマスター。SHM-CDに魅力を感じない上にボートラもなく、ユーザー・フレンドリーな仕様ではない。さて、買い直しはどうしたモノか。あ、クリムゾン好きでこのアルバム持ってない方はマストですよぉ〜。それにしても。この頃のキレ者イアンに対して、フォリナーでの彼は一体何だったのか? イヤ、フォリナー自体は大好きなんですけど…