noriki 2

本多俊之バーニングウェイヴ、山下達郎バンドへの参加を皮切りに、渡辺貞夫、日野皓正、両巨頭のグループで活躍。阿川泰子、伊藤君子、故・松木恒秀が率いたWhat Is HIP?でも、重量級のアコースティック・ピアノを聴かせた野力奏一。最近ではケイコ・リーのバンドでも活躍している。その野力が初めてメジャー・レーベルで組んだリーダー・グループが、83年に結成したNORIKI(ノリキ)だ。オリジナル・アルバムが3枚、ベスト盤が1枚あったと思うが、最近、ちょっと妙な流れで再発が進んでいる。

妙な流れというのは、野力の鍵盤奏者としての実力や、バンドとしての面白さが評価されたというより、1st『NORIKI』(83年)で2曲、上掲2nd『DREAM CRUISE』でも1曲、国分友里恵が歌うヴォーカル・チューンが人気だから。今のシティ・ポップではなく、少し前の80'sブギーの括りで、特に1st所収の<Do What You Do>が脚光を浴びている。オンタイムで愛聴していた者としては、完全に虚を突かれた感じ。当時は野力のピアノを聴きたいジャズ・フュージョン・ファンと、BGMにも最適なポップ・フュージョンを好む一部ライト・ユーザーだけの人気で、中古盤なんか二束三文だったはず。それがいつしか高値高騰。少し前に2枚ともCD/アナログで再発され、この4月にはアナログ盤の2ndプレスが出る。う〜ん、正直、ちょっと異常人気かも…

野力さんはかなり小柄な方だが、全身でアコースティック・ピアノに挑んでいくような気迫あるプレイが特徴だ。かの達郎さんが、難波弘之不在期に野力さんを指名したのも、そういうガッツある演奏が認められてのコトだろう。きっとご本人も、リチャード・ティーあたりを意識されていたのではないか?

そういう意味では、最初に『NORIKI』を聴いた時はちょっとコケた。内容の良し悪しではなく、バリバリ硬派なプレイを期待していただけに、万人向けのライト・フュージョンを演ったコトに、はぐらかされた印象を受けたのだ。でもまぁ、メジャー・レーベルと契約するとは、こういうコトなのだろう。一旦そう割り切ってしまえば、ちゃんと彼らしいピアノ・プレイを聴くことができたし、ポップでも決して安っぽい作品ではなかった。

ヴォーカル・チューンが入り口になるのは、バンドの本質から遠いとはいえ、歌モノへのトライが功を奏したカタチになる。そこから入って、インスト中心のアルバムをトータルで聴いてくれるリスナーが増えてくれれば、それでイイ。

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