billie holliday

相方が熱望していた音楽映画『ザ・ユナイテッド・ステイツ vs.ビリー・ホリデイ』を、地元シネコンで鑑賞。この映画は、1959年に44歳で死去した伝説的ジャズ・シンガー:ビリー・ホリデイの壮絶な人生を描いた伝記作品。個人的にはビリー・ホリデイにハマッたコトはなく、<Strange Fruite(奇妙な果実)>など、代表曲を聴きかじっている程度。それでもニーナ・シモンやサラ・ヴォーン、エラ・フィッツジェラルドと同様、その激しい生き様には興味を持っていた。

何より、<奇妙な果実>に込められた人種差別問題と、それを封じ込めたい政府との攻防。この辺りはブルー・アイド・ソウルの進化系であるAORを愛する者として、あるいはそれを伝播させていく立場の者として、シッカリ知っておくべき問題。その曲、その音楽が生まれた背景、育まれた環境を知ることは、極めて重要なコトだ。

こんなユニークなコード進行を使っている、あんな複雑な分数コードを忍ばせている、こんな面白いポリリズムを鳴らしている、そうしたコトはもちろん大事。でもそんな楽理よりも、そのルーツがどこにあるのか、それを使って何を表現したいのか、それを知ることの方がもっと大きなテーマでは? 人種差別も移民問題も存在しない日本に住んでいるからこそ、そこは自ら意識して学んでいきたい。

ビリーが何故に政府に睨まれ、罠に嵌められて投獄されても、<奇妙な果実>を歌い続けようとしたのか。平和ボケした日本人でも、間接的に黒人文化に触れる機会が多い音楽ファンなら、気づきのチャンスはいくらでもある。

彼女の人生については、おおよその知識は持っていたけど、アンドラ・デイの体当たり演技がとにかく凄まじい。ヒロインだから当たり前といえば確かにそうだが、コレはもう、ほとんど彼女の一人勝ち。2021年ゴールデングローブ賞主演女優賞、アカデミー賞主演女優賞ノミネートは当然だろう。