simon phillips protocol5

ジェフ・ベックやミック・ジャガー、ザ・フー、上原ひろみとの共演やTOTOへの参加などで知られる超絶技巧の名ドラマー:サイモン・フィリップスのソロ・プロジェクト:プロトコルの、5年ぶり5作目。リーダー・アルバムとしては『SYMBIOSIS』(95年)や『ANOTHER LIFETIME』(97年)なんてのもあって通算8作目に当たるが、セッション・ユニット参加作も多い人だから、あまり名前にこだわる必要はないのかも。要はメンバーのバランス感、誰がメイン・コンポーザーになってイニシアチヴを握るか、そのあたりの違いに過ぎないのだろう。

実は某所からインタビュー取材の話を頂戴していたが、先に取材日が決まっていたため、スケジュールが合わずに断念。フィル・マンザネラのプロジェクト:801の頃から注目していたドラマーなので、一度チャンと話してみたかったが(バック・ステージで挨拶を交わしたことはある)、このアルバムを聴いて、余計に悔しくなった。だって、これまで以上に充実した内容で、何故か随分取っ付きやすくなっているように感じられたから。

もちろん丁々発止のハード・フュージョン・スタイルであるコトに変化はないし、針の穴をも通すようなテクニカルなドラミングも、相変わらず。だけど今回は、何故かかつてないほどスンナリと耳に入ってきた。

参加メンバーは、サイモン以下、『PROTOCOL 2』からの準レギュラー的存在であるアーネスト・ティブス(b)。元ジョン・マクラフリン・バンドで、ここしばらくは神保彰のアルバムで不可欠の存在になっていたオトマロ・ルイーズ(kyd)。ベネズエラ出身の彼は、『PROTOCOL IV』のツアーで初めてサイモンと共演を果たし、今作がアルバム初参加となる。そこへ更に、レスター・シル(大物プロデューサー:フィル・スペクターのフィレス・レーベル共同経営者)の息子で、リー・リトナー主宰のギター・コンペティションのロック部門で優勝経験を持ち、スティーヴ・ヴァイからも絶賛される新鋭アレックス・シル (g)、ロベン・フォードやジョン・レジェンドとの共演歴を持つジェイコブ・セスニー(sax)が加わる。

この新作を一連の『PROTOCOL』シリーズと聴き比べたワケじゃないし、ホント、何処がどう変わった、なんて説明できるほど聴き込んじゃいない。でも強いていえば、サックスを導入したアンサンブルの新機軸、オトマロ、アレックス、ジェイコブという新しいフロント陣それぞれの持ち味が、ホンの僅かな分かりやすさ、耳馴染みの良さを演出したのかもしれないな。特にアレックスは、アラン・ホールズワースとジェフ・ベックの間を行き来している感じがあって、思わず、ニヤリとさせられる。

TOTOへのサイモン加入はスティーヴ・ルカサーの強い希望だったと思うけど、やっぱりこの人、TOTOじゃあないよな。