earl klugh

昨日のポストの予告通り、今回はアール・クルー。77年の3rdアルバム。確か最初の3枚のアルバムは2年ぐらいの間に立て続けに出たはずで、それだけセンセーショナルなデビューだったのだ。じゃあ〜何がセンセーショナルだったのか?というと、アコースティック・ギター一本、しかもナイロン弦だけで押し通したこと。フュージョンはジャズとロックの隙間から誕生した音楽だったから、黎明期はエレキが標準だったのだ。曲によってアコースティックを弾くことはあっても、それを前面に打ち出して、まったく持ち替えナシ、というのはアール・クルーが初めてだった。

しかもクルーの初期3枚は、デイヴ・グルーシン&ラリー・ローゼンのプロデュース最初期の作品だった。まだレーベルを立ち上げる以前、ただの原盤制作会社=グルーシン・ローゼン・プロダクション(すなわちGRP)だった頃の話である。ただの事務所だから、クルーのアルバムはブルーノートから、パティ・オースティンだったらCTIから発売された。レーベルになってアリスタとディストリビュート契約を結び、その後独立してGRPレコードに成長していくのである。だからアール・クールの音楽的かつ商業的成功がなければ、後のGRPはなかった。

参加メンバーは、グルーシン(kyd)以下、スティーヴ・ガッド/ハーヴィー・メイスン(ds)、アンソニー・ジャクソン/ルイス・ジョンソン/フランシスコ・センテーノ(b)、ラルフ・マクドナルド/スティーヴ・フォアマン(perc)、そしてエレキ・ギターにリー・リトナー。収録曲はクルーのオリジナル中心にグルーシンの提供曲、ジェイムス・テイラー<Long Ago And far Away>、オーリアンズ<Dance With Me>のカヴァー。このオーリアンズのカヴァーが、当時はメチャクチャ印象的だったな。アル・ジャロウで知られる<This Time>も、実はこのアルバムがオリジナル。アルはコレに歌詞をつけて歌っているのだ。サンバの<Cabo Frio>も今ならどうというコト無いが、ハード・ロックやプログレばかり聴いていた青臭い高校生の耳には、やたらとオトナの音楽に聴こえた。そういえば、Cabo Frioなんてフュージョン・バンド、80年代にありましたね。とにかく品の良さがクルーの特徴だった。

元々はエレキを弾いていて、ジョージ・ベンソンのバンドにも在籍していたクルー。楽器的に融通が効きにくいせいか、飽きられてしまうのも早く、ゼロ年代以降は忘れた頃にポツポツとアルバムを出すだけになってしまったけれど、ずーっとアコギ一本を貫いているのはアッパレ。ジックリ時間を掛けながら、ブレるコトなく自分が納得できる作品だけを出し続けているのだろう。もう10年近く作品がないので、そろそろ何か聴かせてほしいところだ。