bread & butter dvd

ちょっと久しぶりに足を運んだライヴは、SKYE presents BREAD & BUTTER@Billboard Live Tokyo 2nd Show。昨年大好評を呼んだ50周年記念スペシャル・ライヴを、ビルボード・ツアーとして再現。カンムリ上はSKYE(鈴木茂・松任谷正隆・小原礼・林立夫)のプロデュースだけれど、そこはあまり気にせずに、ほぼストレートにブレッド&バターのライヴとして楽しめる内容だ。とはいえ、ブレバタ幸矢さんは今年の誕生日で79歳、弟の二弓さんでさえ73歳。SKYEの面々は全員揃って71歳というご高齢者バンド。1日2ステージなんて大丈夫なの?、なんて余計な心配したが、皆さん飄々とステージに立っていたな。

ライトが落ちると、まずはSKYEの4人が所定の位置に陣取り、ロケン・ロールした短いイントロダクションで快調にスタート。茂さんのギターの鳴りが素晴らしい。続いてブレバタ兄弟が登場し、<湘南ガール>からスタート。マイクを調整していた幸ッチンがアタマを入り損ねるが、もうこの方たちの場合、そんなことはトラブルのウチに入らず、何事も無かったのように進行していく。メンバー同士が気心知れた関係なら、詰めかけたオーディンエスも超常連のノリ。とにかく、このチョイ悪ジジイたちが繰り出す心地よい空間へ、身を浸しに来るワケだ。だからチョッとぐらい声のピッチがズレても、段取りを間違えそうになっても、誰も文句ひとつこぼさない。当人たちだってまったく動じないし、聞く方も悠然と構えている。彼らの場合は、もはや歌や演奏だけが対象ではなく、彼らが醸し出すゆる〜い空気感、潮風を運ぶような存在感そのものがライヴ・パフォーマンスなのだろう。

そうした意味では、いつもと同じく まったりペースのショウ。でもそれがホールではなく、ライヴ・レストランのスペースによく似合う。超初期、故・岸部シロー(元タイガース/後に俳優)と組んでいた“シローとブレッド&バター”時代の<野生の馬>では、シロー役を小原が務めて3声コーラスが復活。デュオでは幾度も歌っていたこの曲に、懐かしくも新鮮な息吹を吹き込んだ。続いてブレバタの2人が引っ込み、少し前に出たSKYEのアルバムから 1曲<Isolation>を披露。ブレバタや尾崎亜美さんのライヴでSKYEがバックを務める時に、決まってSKYEコーナーで歌われるロックン・ロール調のナンバー。歌詞はコロナでステイホームを強いられたストレスを歌っているが、それを今ライヴで演っても そのまま通用してしまうことを嘆いていた。

1st / 2nd 入替制のため、ライヴも70分仕切りがデフォルト。ライヴ定番曲の多いブレバタでは、セットから溢れてしまうナンバーがどうしても多くなる。でも今回は、絶対欠かせない代表曲は押さえつつ、最近のライヴではトンとご無沙汰だった<奇蹟のヴィーナス>や<THE CROW>を入れつつ、比較的新しい<海岸へおいでよ>なんてあたりを交えて。これが良かった。ちょっと手垢がついた感のある<PINK SHADOW>にしても、全体は白タマで軽めに流しながら、ドラムで16ビートの細かい裏ノリを刻み、リムショットでアクセントを付ける技アリのアレンジ。これはさすがマンタとミッチ、両氏の鉄壁なコンビネーション!と唸らされた。終盤は礼さんのベース・ソロもフィーチャーして。それにしても、茂さんのギターは全編通して絶好調。最近のインタビューで、久しぶりのソロ・アルバムを作っている、なんて発言があったが、まさにそうすべきタイミングだと思わせられた。

ブレバタのキャリアのほとんどを、付かず離れずで歩んできたSKYEのメンバーたち故、雰囲気はゆるくても、ゆる〜いなりに阿吽の呼吸がある。イヤ、逆にゆったりだからこそ、本当に息が合っていないとアンサンブルはバラけてしまうだろう。スコアなら誰でも同じにプレイできるが、実はその譜面にない行間をどう表現し、互いに折り合わせていくのかが、実力派ミュージシャンの真骨頂。同じ曲を同じアレンジでやっても、必ずしも毎回同じ演奏にはならないから面白い。そうした相手の手管を互いに知り尽くしている者同士、笑顔で交わす音の駆け引きが、湘南サウンドの向こう側で 愉快に自然体で奏でられていた。

【2nd Show SETLIST】
〜introduction(SKYE)
1. SHONAN GIRL
2. HOTEL PACIFIC
3. MONDAY MORNING
4. あの頃のまま
5. 海岸へおいでよ
6. センチメンタル・フレンド
7. 野生の馬
8. Isolation(SKYE)
9. 奇蹟のヴィーナス
10. 地下鉄
11. THE CROW
-- Encore --
12. PINK SHADOW