milton nascimento_courage

陽気に誘われてミルトン・ナシメント。ブラジルものを聴くなら、まずはココから、と言っていいシンガー・ソングライターであり、“A VOZ DO BRASIL(ブラジルの声)”とも呼ばれる国民的アーティストだ。そしてこのアルバムは、数多い彼の名盤の中でもベーシックに数えられる一枚である。レコーディングは1969年だから、まさにエヴァー・グリーン。ミルトンにとってはアメリカでのデビュー作であると同時に、自身2作目、初のメジャー作品でもあった。

元々は、<Travessia>という曲が大手TV局主催の第2回MPBソング・フェスティヴァルで準優勝し、Codeil なるレーベルから『MILTON NASCIMENTO(トラヴェシア)』でデビュー。しかしそこがブラジルはミナス地方のローカル・レーベルだったため、エミール・デオダートが自ら籍を置く米CTIのクリード・テイラーにミルトンを紹介。クリードはミルトンを米国に呼び、デオダートをはじめとする近しいジャズ系の米国・ブラジル混成ミュージシャンを集めてレコーディングを行ない、この USデビュー作『COURAGE』が完成した。収録曲の多くは、ブラジル・デビュー盤の英語版リ・レコーディング。アルバムのオープナー<Bridges>こそが、<Travessia>である。

参加メンバーは、デオダート(organ)、ハービー・ハンコック(pf)、アイアート・モレイラ(perc)にホセ・マリノ(b)、ジョアン・パルマ(ds)に、大所帯のオーケストラ。当時のCTIはまだA&M傘下にあったが、その頃からアントニオ・カルロス・ジョビンやワルター・ワンダレイ、タンバ4などのブラジル勢を、積極的に世界に向けて発信していた。そもそも、ゲッツ=ジルベルトを作った人でもあるし。

このあと、EMI-Odeonで出した通算3作目『MILTON NASCIMENTO』からがミルトンの黄金期になるから、このアルバムはいわばその準備期間とも言える。でも米国流儀を取り込みつつ、彼の存在をブラジル国外にも広く知らしめた点でも意義は大きく。もっとも自分はブラジル音楽に関しては門外漢なので、あまり多くは語らないけれど、コレがその重要作であるコトには変わりがない。