角松敏生が現在制作中である約８年ぶりのオリジナル・ニュー・アルバムから、そのプロトタイプとして４曲５ヴァージョン＝『MILAD #1』の先行配信をスタート。制作中であるフル・アルバム『MILAD（Music Live Act & Dance）』は、角松がいま目標にしている新たなステージ・エンターテインメントのサウンドトラック、ということらしい。
真っ先にデジタル・リリースを耳にしたコア・ファンの間では、当然のように絶賛の嵐が湧き上がっている。でもアルバムが出れば、発売と同時にチャートを駆け上がって上位に立つのは、熱狂的ファンを持つアーティストの常。そう驚くことではない。むしろ、そこからどれだけ長い間上位を守れるかが重要だ。それより『MILAD #1』の場合は、本来アナログ育ちである角松の新曲が、何故に配信リリースだけなのか？ そこにどういう意味があるのか？ その意を汲み取ることが肝要。そもそもプロトタイプとされているのだから、途中経過、もしくはフル・アルバム完成前のオルタネイト・ヴァージョンとして、しばし冷静な気持ちで付き合いたい。実際、5月に配信リリースされる『MILAD #2』では、今回２人の女性シンガーとそれぞれデュエットした＜Follow Me＞の３つ目のヴァージョンが用意されているらしいから。
もっとも完成形の『MILAD』は、「おそらく最後のオリジナル・アルバムになるだろう」などと言われていて。だからそこに向けてテンションを高めていく意図があるのだろう。個人的には、“最後のオリジナル・アルバム” というところがポイントで、セルフ・リメイクやカヴァー・アルバム的な企画作は今後も作られると思っているし、そうした中での新曲発表も考えられる。でも全曲書き下ろしによるガチのフル・アルバムは最後、ということ。“凍結” の時もそうだったが、カタチや表現形態が変わったとしても、彼自身 音楽を捨てられるワケはないから、ホントに最後なの？と悲観する必要はないと思っている。
一部で、音飛び？ DL不良？なんて声が飛び出ているオープニングのインスト＜The Dance Of Life＞は、Cut Out Edit Short Version とある通り、官能的ギター・ソロの途中で容赦なく音をブッタ切ったもの。慌てる前に、よく見なさいッ
オリジナルは、ホイットニー・ヒューストンやマライア・キャリー、アレサ・フランクリン、シャニース、スターシップ、日本では高中正義や荻野目洋子 等などのプロデューサーとして知られるナラダ・マイケル・ウォルデンのソロ４作目『THE DANCE OF LIFE』（80年／邦題『スウィート・ダンス・ミュージック』）のタイトル曲。原曲はナラダがイタリアのロック・フュージョン系技巧派ギタリストを連れてきてフィーチャーしたインストで、ジャズ・ロックした変拍子の曲調自体は、ほぼオリジナルを踏襲している。元々ナラダはフュージョン黎明期の名バンド：マハヴィシュヌ・オーケストラでビリー・コブハムの後任ドラマーとして知られるようになり、ジェフ・ベック『WIRED』への参加でロック方面に知名度を上げた。その頃早くもクロスオーヴァー系のソロ作を出していたが、セールス的に厳しく、契約維持のためにディスコ・ファンク色を取り入れて成功。その頃作ったのが『THE DANCE OF LIFE』である。そしてディスコ曲やファンク・チューンが並ぶ中で、唯一彼のジャズ・ルーツを示して意地を通したのが、このタイトル曲だった。
そうしてもうひとつ。ナラダ・マイケル・ウォルデンの “ナラダ” は、一種のホーリー・ネームであること。カルロス・サンタナのディヴァディップ、ジョン・マクラフリンのマハヴィシュヌも同じで、哲学者／ヨーガ導者スリ・チンモイの教えを受けている。この＜The Dance Of Life＞も、チンモイの詩を元に命名されていて、その教えがナラダのアルバムにプリントされている。
Doubt
is the prose of the mind.
Faith
is the poetry of the heart.
Aspiration
is the song of the soul.
Realisation
is the dance of life.
もちろん角松自身は、チンモイとは関係ない。でも大学では哲学科に学び、売れっ子になってからも密教や仏教に興味を持って、高い精神性を保っていたのは、熱心なファンならご存知だろう。ならばナラダに何処か、音楽以外のシンパシーを抱いていても不思議ではない。そう考えると、『MILAD＝Music Live Act & Dance』の “Dance” も、いま現代のダンスのイメージだけではなく、もっと根源的でプリミティヴな、肉体的表現としての “Dance” という意味を強く含んでいる気がする。来月からスタートするツアーが The Dance of Life と名付けられたのは、80年代の角松ツアーが "Dancing Tour"と呼ばれていたのとは意味が違うと思うのだ。
それにしても、今回ビックリしたのは、リリース形態が従来と変わったことによって、戸惑ったり困っているファンがかなり多いという事実。配信デジタル・リリースでもダウンロードとサブスクリプションの違いさえ よく分かっていない人が多くて、ちょっと愕然とした。業界の常識は世間の非常識、ってコトはよくあるけど、エルダー層の音楽ファン、特に音楽好きが多いと思しき角松ファンでさえコレなのか
自分のポジションを考えると、もう完全に悲しい気持ちになってしまう。10代の若いコがCDに触ったコトがない、というのとはワケが違うと思うんだけどな。
もっとも完成形の『MILAD』は、「おそらく最後のオリジナル・アルバムになるだろう」などと言われていて。だからそこに向けてテンションを高めていく意図があるのだろう。個人的には、“最後のオリジナル・アルバム” というところがポイントで、セルフ・リメイクやカヴァー・アルバム的な企画作は今後も作られると思っているし、そうした中での新曲発表も考えられる。でも全曲書き下ろしによるガチのフル・アルバムは最後、ということ。“凍結” の時もそうだったが、カタチや表現形態が変わったとしても、彼自身 音楽を捨てられるワケはないから、ホントに最後なの？と悲観する必要はないと思っている。
一部で、音飛び？ DL不良？なんて声が飛び出ているオープニングのインスト＜The Dance Of Life＞は、Cut Out Edit Short Version とある通り、官能的ギター・ソロの途中で容赦なく音をブッタ切ったもの。慌てる前に、よく見なさいッ
オリジナルは、ホイットニー・ヒューストンやマライア・キャリー、アレサ・フランクリン、シャニース、スターシップ、日本では高中正義や荻野目洋子 等などのプロデューサーとして知られるナラダ・マイケル・ウォルデンのソロ４作目『THE DANCE OF LIFE』（80年／邦題『スウィート・ダンス・ミュージック』）のタイトル曲。原曲はナラダがイタリアのロック・フュージョン系技巧派ギタリストを連れてきてフィーチャーしたインストで、ジャズ・ロックした変拍子の曲調自体は、ほぼオリジナルを踏襲している。元々ナラダはフュージョン黎明期の名バンド：マハヴィシュヌ・オーケストラでビリー・コブハムの後任ドラマーとして知られるようになり、ジェフ・ベック『WIRED』への参加でロック方面に知名度を上げた。その頃早くもクロスオーヴァー系のソロ作を出していたが、セールス的に厳しく、契約維持のためにディスコ・ファンク色を取り入れて成功。その頃作ったのが『THE DANCE OF LIFE』である。そしてディスコ曲やファンク・チューンが並ぶ中で、唯一彼のジャズ・ルーツを示して意地を通したのが、このタイトル曲だった。そうしてもうひとつ。ナラダ・マイケル・ウォルデンの “ナラダ” は、一種のホーリー・ネームであること。カルロス・サンタナのディヴァディップ、ジョン・マクラフリンのマハヴィシュヌも同じで、哲学者／ヨーガ導者スリ・チンモイの教えを受けている。この＜The Dance Of Life＞も、チンモイの詩を元に命名されていて、その教えがナラダのアルバムにプリントされている。
Doubt
is the prose of the mind.
Faith
is the poetry of the heart.
Aspiration
is the song of the soul.
Realisation
is the dance of life.
もちろん角松自身は、チンモイとは関係ない。でも大学では哲学科に学び、売れっ子になってからも密教や仏教に興味を持って、高い精神性を保っていたのは、熱心なファンならご存知だろう。ならばナラダに何処か、音楽以外のシンパシーを抱いていても不思議ではない。そう考えると、『MILAD＝Music Live Act & Dance』の “Dance” も、いま現代のダンスのイメージだけではなく、もっと根源的でプリミティヴな、肉体的表現としての “Dance” という意味を強く含んでいる気がする。来月からスタートするツアーが The Dance of Life と名付けられたのは、80年代の角松ツアーが "Dancing Tour"と呼ばれていたのとは意味が違うと思うのだ。
それにしても、今回ビックリしたのは、リリース形態が従来と変わったことによって、戸惑ったり困っているファンがかなり多いという事実。配信デジタル・リリースでもダウンロードとサブスクリプションの違いさえ よく分かっていない人が多くて、ちょっと愕然とした。業界の常識は世間の非常識、ってコトはよくあるけど、エルダー層の音楽ファン、特に音楽好きが多いと思しき角松ファンでさえコレなのか
自分のポジションを考えると、もう完全に悲しい気持ちになってしまう。10代の若いコがCDに触ったコトがない、というのとはワケが違うと思うんだけどな。
