andy fairweather low 080

今日はちょっとマニアックなヤツ。英国ロック好きにはそれなりに知られた人だけど、このアルバムまでシッカリ抑えている方はあまり多くはないだろう。90年代以降は、エリック・クラプトンのバンドで御大のサポート・ギタリストとして貢献。アルバムの多くにも参加してしているアンディ・フェアウェザー・ロウの4thソロ『MEGA-SHEBANG』(80年)、これはコリアン紙ジャケ盤が世界初CD化だ。

アンディのレコード・デビューは、サイケなポップ・ロック・バンド:エイメン・コーナーのシンガーとして。60年代終盤は半ばアイドル的人気を博し、全英トップ10ヒットを連発。でもその後、自分のやりたい本格的ロック・サウンドを前面に打ち出し、エイメン・コーナーをフェア・ウェザーに再構成してアルバムを出した。が、これは長続きせず、74年にソロ・デビュー。これが4作目で、しばし最後のソロ作になる。彼が再び自分名義の作品を出したのは、四半世紀を経た2006年のコトだ。

このソロ時代のアンディは、まさに英国パブ・ロックの権化みたいな存在で、大西洋を渡ってきた米国音楽の旨みを、ロンドンの粋なセンスですくい取ったようなところがある。ロックン・ロールにファンク、R&B、カントリー、フォーク、ニューオリンズ、ジャイヴ、それにレゲエやカリブのサウンドと、まさにハイブリッド…、というよりも庶民的なゴッタ煮に近い感覚か。

でもA&Mからワーナーへ移籍した この4thソロ『MEGA-SHEBANG』は、若干ストレートなロック志向を強めていて。カリビアン・カラーが薄まった所に吹き込んで来たのは、パンキッシュなニュー・ウェイヴの風。 曲にもよるが、シンセの音や性急さを増したビートに、そうしたテイストが滲んでいるのだ。調べてみると、この時期アンディは、ザ`フー『WHO ARE YOU』(79年)のセッションに参加していたそうで。しかもアンディの初期ソロ作を手掛けたグリン・ジョーンズがプロデュースした『IT'S HARD』(82年)では、ピート・タウンゼント不在時のリハーサルでギターを弾くことになる。なるほど、そういう経験や資質が、アルバムの指向性に現れたのだろう。

ちなみに参加メンバーはヘンリー・スピネッティ(ds)、メル・コリンズ(sax)に、ゴンザレスのホーン隊であるスティーヴ・グレゴリーとバド・ビードルといった常連に、デイヴ・エドモンズに近い筋。収録曲はアンディのオリジナルで、1曲だけファッツ・ドミノのニューオリンズ・クラシック<Hello Josephine>(原題は My Girl Josephine)を演っている。<Step Shuffle>なんて、まるでドナルド・フェイゲン。こういうのを知って自分の音楽観の奥行きを広げることが、AORを深く楽しむことに繋がるんだよ。