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日曜の名物FM番組:山下達郎サンデー・ソングブックのリクエスト特集にて、何とアフィニティ<Eli's Coming>。リクエストを出した主は、何と達郎バンドのkyd:難波弘之。ウチワで何やってんだよ〜、と苦笑しながら、難波さんのルーツという話にナルホド、と。そこで思わず、CDを引っ張り出してみた。リリースされたアルバムはコレ1枚きりだけど、英国ロックきってのレア盤として知られ、何度も何度も繰り返し再発されている。実際、我が家にも複数。オリジナル・アルバムは7曲入りだったが、それが紙ジャケット化された時だったかボーナス曲8曲追加の15曲入りとなり、更にデラックス・エディションの2枚組になり、気がつけばいつの間にか4枚組ボックス仕様が出ていた。

何故それほど人気があるかというと、ジャズとブルースを基調としながら大きくプログレ方面に踏み出した時代性溢れる音楽性と、英国ロック・マニア垂涎のヴァーティゴ・レーベル発信であること、そして幻想的な美しさを放つキーフのアートワーク。その三位一体に、してヤラレるワケだ。リリースは1970年。

メンバーはリンダ・ホイル(vo)、リントン・ネイフ(kyd)、マイク・ジョップ(g)、モ・フォスター(b)、クラント・サーペル (ds)。そのうちリントン・ネイフは、達郎さんも力説していたように、その後セッション・ミュージシャンとして活躍し、特にケン・ゴールドやココモ〜ゴンザレス周辺のホワイト・ソウル〜英国ファンク系でアレンジの才能を発揮する。モー・フォスターもファンシー(ギター:レイ・フェンウィック、ドラム:レス・ビンクス)を経てスタジオ・セッションで大活躍するが、ジェフ・ベックとの絡みが有名で、リーダー作も複数出している。グラント・サーベルはセイラーを結成。それだけ実力のあるミュージシャンが揃っていたのだ。でもフロントに立つリンダ・ホイルのヴォーカルも、パンチ力があってなかなか強力。“山椒は小粒でピリリと辛い” 状態で、この後ニュークリアスをバックにソロ・アルバム『PIECES OF ME』を出す。アルバムにはブラス・アレンジでジョン・ポール・ジョーズが参加。プロデュースは、ジェネシスやロキシー・ミュージック、クイーン、ポール・キャラックがいたエースなどを手掛けたジョン・アンソニー。

彼らの魅力は、安定したリズムに乗った推進力のあるリンダのヴォーカル、そしてリントン・ネイフの多彩な鍵盤プレイだろう。リンダが喉を痛めて休養していた時期もバンドは活動を止めず、そのままリントンをフィーチャーしたジャズ・ロックっぽい演奏で急場を凌いだそうだ。彼のファンキー・タッチのエレピやブライアン・オーガー張りのハモンド・オルガンを聴いていると、その後のファンキー系スタジオ・ワークも納得できる。またインプロヴィゼーション部分は、当時のディープ・パープルやイエスに通じるトコロが多々。大物になれるのも、アルバム1枚で消えるのも、言わば時の運。実力に大差はなかったんだ、と思い知る。

そしてアフィニティの場合、選曲の上手さも要チェック。達郎サンソンで掛かった<Eli's Coming>は、言うまでもなくローラ・ニーロの曲。スリー・ドッグ・ナイトのヒットとしても有名で、アフィニティはアルバム未収のシングルとして世に出した。<I Wonder If I Care As Much>はエヴァリー・ブラザーズ、<Cocoanut Grove>はラヴィン・スプーンフル、そして圧巻の<All Along The Watchtower>はもちろんボブ・ディラン。2枚組に入っていた第2作用デモ音源には、ビートルズやスティーヴィー・ワンダー、キャロル・キングにモーズ・アリスンの楽曲も。プログレやジャズ・ロックのイメージが強いアフィニティだけど、例えば黒人メンバーが在籍した第2期ジェフ・ベック・グループをもっとジャズ的に展開したら、きっとこれに近いモノになるだろう。

やっぱり音楽はジャンルじゃない、地続きなんだ!と実感するな。