bonnie raitt 022

ボニー姐さん、安定感に満ちた6年ぶりのニュー・アルバム『JUST LIKE THAT...』が届いた。タイトルは、アルバム4曲目に収めた同名曲から来ていて、“Just Like that your life can change” 、直訳すれば、「あなたの人生が変わるかもしれないように…」ということ。つまり、突然のコロナ禍で、それまでの生活が大きく変わってしまったことを指しているのだろう。それでも歌のテーマはともかく、音楽的にはドッシリゆったり、相も変わらぬボニー節で安堵感を与えてくれる。

そんな中でオオッと耳をそばだてたのは、ローリング・ストーンズと共演したかのようにグイグイと攻め立てるロックン・ロール・チューン<Living For The Ones>だ。これは姐さんと親交が深く、近年はレコーディング常連にもなっているギタリスト:ジョージ・マリネリとの共作。今回はコロナの関係かこの曲ともう1曲にしか参加していないが、それそこキース・リチャーズ張りのサックリしたギター・ソロと投げやりなバック・ヴォーカルを披露していて、いつも以上に存在感を示している。歌の内容も、最近亡くなった友人や家族に捧げたもの。そういえば、『SLIPSTREAM』(12年)、『DIG IN DEEP』(16年)と直近2作に参加していたマイク・フィニガンも、去年三途の川を渡ってしまったんだよなぁ…。

レコーディングは、ロックダウンや行動制限が緩和された昨年後半。北カリフォルニアの自宅近くのスタジオに、リッキー・ファター(ds)やハッチ・ハッチンソン(b)ら、自分のバンド・メンバーを招集し、落ち着いた雰囲気でジックリとセッションを進めたようだ。唯一の例外が、2015年にL.A.でレコーディングしたという<Here Comes Love>。これは言わば前作『DIG IN DEEP』のアウトテイクのようで、メンバーもジョン・クリアリー(kyd)、マイク・フィニガン(org)、ジョージ`・マリネリ(g)にリッキー&ハッチのリズム隊。スタイルもニューオリンズ・テイストがいっぱいに詰まっている。

女性ながらブルース・ロックのギタリスト/シンガー・ソングライターとして活動してきたから、その音楽性はエリック・クラプトンにも程近い。でもボニー姐さんの方に より安心感を抱いてしてしまうのは、麻薬や酒に溺れようとも、メジャー契約を失なおうとも、グラミーを受けようとも、音楽自体にはまったくブレが出ない彼女と、若い時から神様扱いされて常にキャリアを翻弄されてきたクラプトンの違いだろう。最近は随分と地に足が着いてきたとはいえ、クラプトンには未だ衆目の視線を気にしているようなところがある。でもボニーは何処吹く風。アタシはアタシ、演りたいことを演るわよ。そういう気っ風の良さがステキなのだな、きっと。