haruko kuwana_show me

先月に続いて、桑名晴子の高音質CD/紙ジャケ化プロジェクト第2弾、79年発表のソロ2作目『SHOW ME YOUR SMILE』のご紹介。タワーレコードとカナザワの【Tower to the People x Light Mellow's Picks】で初CD化して以来、ちょうど10年ぶりの銀盤化。今回は ALTAVOZ / Sky Station からのリリースになる。だけど旧盤の方もタワーにまだ在庫があるようで、プラケながら価格は約2/3(オマケにカナザワの解説付き)。2020年秋には、レコードの日限定のアナログ盤も復刻されたが、そちらもまだ参加店に在庫があるみたい。なので今回はシティ・ポップ・ブームを駆っての、ちょっとチャレンジングな新仕様再発と言えるかな。しかも1作目同様、オリジナル・アナログ盤の装丁を無視した無駄に豪華なW紙ジャケット。アナログ再発ありきの仕様かもしれないが、紙ジャケ好き以外には、もはや無用の長物と思えてしまう…。

でもアルバムの内容自体は、ブームとは関係なしに、是非とも聴いてほしい和モノ・シティ・ソウルの傑作盤。彼女の代表作としては、1作目『MILLION STARSか、4枚目の和モノ・カヴァー集『MOONLIGHT ISLAND』が挙げられるコトが多いが、個人的にはむしろコチラを愛聴していた。

バック・アップは “関西のスタッフ” とも称されたベーカーズ・ショップ。大阪ロック・シーンで活躍した実力派グループで、上田正樹と活動していたベーカーこと土居正和(ds)が、その後に在籍したソー・バッド・レビューの永本忠(b)と国分輝幸(kyd)を誘い、元スターキング・デリシャスの小島良喜(kyd)、元ファッツ・ボトル・ブルース・バンドの船岡辰哉(g)らと組んだ5人組だった。両者を結びつけたのは、当時の彼女のプロデューサーでベルウッド仕掛人:三浦光紀だったそう。“16ビートのR&Bや軽いサザン・ロックが好き”という晴子と、和製スタッフの相性は当然良くて、『MILLION STARS』の時以上にノビノビとした歌が楽しめる。

軽快なハンドクラップで始まるスターターは、シングルにも切られた哀愁のファンキー・サンバ<そして電話のベルは>。この曲、ハルチンの自作だけれど、コジヤンのアレンジがメチャクチャ素晴らしくて、個人的にシティ・ポップ名編曲の番付に入れたいほど。もちろん当人のソウルフルなハスキー・ヴォイスあってこそ、だけど、キレイに澄んだ声でコレを歌われても、きっと合わない。そこまで考えての編曲とと思われ、ベーカーズ・ショップ解散後も晴子〜コジヤンのコンビが続くのは大いに納得できる。『MOONLIGHT ISLAND』はAB'Sがバックで人気だけれど、kydにはコジヤンと中西康晴という関西勢がサポートに付いていたからね。自分が2014年に組んだコンピ『Light Mellow MOMENT』のスターターも、この曲を使わせてもらった。

ダニー・ハサウェイ<The Ghetto>みたいなファンキー・ストラット<Show Me Your Smile>、船岡とデュエットしたミッド・ファンクでスティーヴィー・ワンダー風シンセ・ベースが効果を上げる<天気予報>、ゆったりハネる<蒼い風>に、塩次伸二がゲスト参加したポップ&グルーヴィー・ダンサー<Chance>、サディスティックスのアルバムで歌っていた高橋幸宏=後藤次利作<On The Seashore>のカヴァー、某デパートのCMに使われたというシングル曲<もっとイマジネーション>など、前作以上にバラエティに富んだ楽曲を、ソウル・フュージョン的なベーカーズ・ショップの優れたバッキングで披露。海外録音で時間に限りがあったと思しき『MILLION STARS』のような粗さはなく、ジックリと煮詰めてからレコーディングした様子が伝わってくる。ハルチンのハスキーでソウルフルな個性的ヴォーカルが、如何にも気持ち良さそうだ。

リーズナブルな初CD盤、再発アナログ、そしてこの豪華紙ジャケ仕様の最新復刻盤と、どれでもイイけど、この作品を聴かずして、桑名晴子を語ること勿れ、よ。