suzi qlaurel canyon

ゴールデン・ウィーク中ほぼ仕事だったので、最終日は締切をチョイと脇に置いての家庭サーヴィス。相方のリクエストで、プロデューサー井出靖さん主催の『CITY POP POSTER FLYER EXHIBITION』@代々木公園近くのGrand Galleryからの、音楽映画2本立てスージー・クアトロ『SUZI Q』と『LAUREL CANYON(ローレル・キャニオン〜夢のウエストコースト・ロック)』@ヒューマントラストシネマ渋谷と、なかなかに充実の半日。
『CITY POP POSTER FLYER EXHIBITION』の内容は、おおよそコチラに上がっているモノの展示だったけれど、以前、横浜赤レンガ倉庫で開催された はっぴいえんど〜ナイアガラ〜YMO主体の『70's バイブレーション』より、今のシティ・ポップ・ブームを反映してか、より解釈の幅が広かった。展示スペースはかなり狭かったが、その分ポスターやフライヤーに特化していて興味深かった。

渋谷の街中へ移動しての、スージー・クアトロ『SUZI Q』。それほど夢中になったワケじゃなかったが、自分の洋楽の目覚めとスージーの日本デビューがほぼ同時だったので、<Can The Can><48 Crash><Daytona Demon><Devil Gate Drive(悪魔とドライブ)><The Wild One><Your Mama Won't Like Me(ママのファンキー・ロックン・ロール)>など、ヒット曲はぜ〜んぶ覚えている。アルバムは友達に借りたんだったかな? 日本ではグラム・ロック的な見せ方だったけど、音はポップなブギー・ロックで馴染みやすく。ミッキー・モストのプロデュースとか、ニッキー・チンとマイク・チャップマンが曲を書いてたとか、そのあたりはみんな後付け。ルックスもレザーのジャンプ・スーツが目立つだけで、悪戯にケバくなかったのが、中坊だった自分には好印象だった。彼女を知っていたから、ランナウェイズのデビューには驚かなかったな。

スージーがソロ・デビュー前に組んでいた姉妹中心の女性バンド:プレジャー・シーカーズについては存在程度しか知らなかったが、まぁ、普通のガールズ・ポップ。女性ロック・バンドとしては、レア・グルーヴでちょいと注目されたミリントン姉妹率いるファニー、ウエストコースト・ロック方面で知られるローズマリー・バトラーが在籍したバーサの方が、スージーのソロ・ヒットより先だった。どちらのグループも女性バンド変遷を遡るシーンでジャケットだけ登場するが、ファニーがメンバー・チャンジした時に新規加入したのがスージーのお姉さん:パティ・クアトロだったのは触れられていない。姉妹グループを抜けて一人ロンドンに抜け駆けした形のスージー、姉妹間ではいろいろ複雑な感情があったようで。英国やヨーロッパ、豪州、日本などで大成功した割に、本国アメリカでは苦戦し、<Stumblin' In(メロウなふたり)>が79年にトップ5入りしたのが唯一の大ヒット。でもその頃には普通のポップスになっていて、自分はほとんどスルー。2010年代に復活したのは知っていたが、実は80年代以降もTVドラマやミュージカルで女優として成功していたのは知らなかった。そういう意味では、発見の多い映画だったかも。

続いて同じシアターで観た『LAUREL CANYON(ローレル・キャニオン〜夢のウエストコースト・ロック)』は、ミュージシャンからフォトグラファーに転向したヘンリー・ディルツと、やはり西海岸アーティストを多く撮っている女流写真家ヌリット・ワイルドが語っていくローレル・キャニオン絵巻。ザ・バーズに始まり、バッファロー・スプリングフィールド、ママス&パパス、ジョニ・ミッチェル、C.S.N.& Y.、ジャクソン・ブラウン、ドアーズ、リンダ・ロンシュタット、イーグルスなどが登場し、1965~75年ごろのウエストコースト・ロック・シーンがドキュメンタリーで綴られていく。月末から封切り予定の『ECHO IN THE CANYON』とダブる部分が多そうだが、あちらはボブ・ディランの息子ジェイコブや後継世代のミュージシャン目線で見たローレル・キャニオンで、斬り口が違うのだとか。ジム・モリソンの死、ローリング・ストーンズ “オルタモントの悲劇”(C.S.N.& Y.とフライング・ブリトー・ブラザーズが出演)と、アルコールやドラッグ、暴力がらみの暗い事件があり、それぞれの商業的成功によって各アーティスト同士のコミュニケーションが失われ、ローレル・キャニオンの時代が崩壊していく。

そうしたおおよその西海岸ロック史は把握していたので、個人的な新しい発見はあまりなかった。そパサイクでもママ・キャスのカタリスト的存在感の大きさ、若い日のジョニ・ミッチェルの可愛らしさは新鮮だったな。

リンダ・ロンシュタット『THE SOUND OF MY VOICE』は、先週単独で観たが、スケジュール次第で1日3本ぶっ通しで鑑賞することも可能。自分たちはサスガにそれだと疲れそうなので回避したけれど、1本だけでは足を運ぶか微妙な映画も、こうしてまとめて観られるなら出掛けてみる気になる。なかなか充実した1日でした!