melissa manchester live77

最近、凄まじいまでのハーフ・オフィシャル・ライヴ音源ラッシュで、正直ゲンナリしているけれど、これは完全オフィシャルのフル発掘ライヴ音源。メリサ・マンチェスターが1977年10月30日、フロリダ州ゲインズヴィルのグレート・サザン・ミュージック・ホールで繰り広げたショウを、CD2枚組21曲、たっぷり約100分のヴォリュームで完全収録している。公式盤だから音質もバッチリ、しかもあまり大きくないホール公演なのか、オーディエンスの反応が生々しくて臨場感がスゴイ。如何にも古き良き時代のライヴ・アルバム、といった印象なのだ。

メリサの77年というと、6枚目のアルバム『SINGIN'...(雨と唄えば)』を出したばかりの頃。<Midnight Blue>を全米6位のヒットにしたあと、トップ30ヒットを続けて次なる大ヒットを狙っていた、上昇機運に乗っている時期であった。バンド・メンバーは、後にヒートを結成するトム・サヴィアーノ(sax,kyd)をバンマスとして、ジョン・ハント(g)、ビル・ボーダイン(b)ら7人で、リズム隊にアート・ロドリゲス(ds)とレニー・カストロ(perc)と、後年のラーセン・フェイトン・バンドのコンビがいるのがミソ。トムとリチャード・フェルツ(tr)による管の存在も効いている。音を聴くと、女性コーラス隊の活躍も光るが、何故かクレジットがなくてが残念。

セットリストのバランスも良く、それまでに出したアルバムから満遍なく。思い入れが深いのだろうデビュー作から3曲。最新作『SINGIN'...』と前作『BETTER DAYS & HAPPY ENDINGS』からも、それぞれ数曲ずつ披露。ヒットした3rdアルバム『MELISSA』からは<Midnite Blue>を中心に<We've Got Time><This Lady's Not Home><Party Music>と4曲歌っていて、ひときわ高い歓声を浴びている。個人的にはディスク1の終盤、リオン・ウェアがマイケル・ジャクソンに書いた<I Wanne Be Where You Are>のカヴァー、マイケル・フランクスがオリジナルの<Monkey See Mionkey Do>、フォンテラ・バスの<Rescue Me>とファンキー・アレンジのリメイクが続くあたりが圧巻で、最後はライヴ用のレパートリーと思しきブルース・カヴァー<Hi-Heels Sneakers>で締める。そして後半は次作『DON'T CRY OUT LOUD』に入る当時未発表のメロウな新曲<Caravan>へ。更に<Be Happy Now>をオーディエンスの手拍子に乗せてアカペラで披露し、メリサ自身のピアノ弾き語りへ。そうした実際のパフォーマンスそのままの展開が気分を盛り上げ、ホントにショウを観ているような気分になる。

聴いていると、これだけデキの良いライヴ・アルバムを何故にお蔵入りさせたのか、本当に不思議になるほど。それはどうも、上記ラインアップを中心に続いてきたこのバック・バンドが、これで最後のツアーだったらしく、それもあってライヴ・レコーディングしたらしい。しかしアリスタ総帥クライヴ・デイヴィスは、ココはライヴ盤ではなく、新しいスタジオ・アルバムでメリサのキャリア・アップを図るべき、と考えたのだろう。予定していたライヴ・アルバムのリリースを引っ込め、新布陣で『DON'T CRY OUT LOUD』を制作。見事タイトル曲をトップ10に送り込んで、メリサ人気を決定づけた。

だからリリース中止は、あながち間違いとは言えないけれど、このショウの完成度の高さは、別の意味でメリサの素晴らしさを教えてくれる。冷静に聴くと、長いツアーをこなしてきたのか、メリサにしてはちょっと歌声が粗い気がするけれど、それもライヴならではの魅力。<A Love Of Your Own>の籠めた感じとか、メチャクチャ熱くて手に汗握る。時代的なモノもあるのか、空気感はアヴェレイジ・ホワイト・バンドの名ライヴ『PERSON TO PERSON』(76年)に似た感じ。コレはメリサ好きならずとも、ぜひ聴いてほしい傑作ライヴ・アルバムだ。陽の目を浴びて、マジ良かった。