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vangelis

『BLADE RUNNER』や『CHARIOTS OF FIRE(炎のランナー)』など、数々の映画音楽で有名なギリシャの作曲家・シンセサイザー奏者ヴァンゲリス(Vangelis)が、5月17日、パリの病院で逝去。新型コロナに罹患し、治療を受けていたという。享年79歳。『炎のランナー』のテーマ曲は全米No.1ヒットになり、1982年のアカデミー賞で作品賞とオリジナル作曲賞を受賞。この曲は1924年に開催されたパリ五輪の陸上選手の物語を映画化したものだったが、ヴァンゲリス自身がオリンピックに縁深く、2000年のシドニー五輪閉会式で音楽監督を務め、オーストラリアからギリシャへオリンピック旗を引き継ぐ際の音楽を担当。当然のように04年アテネ五輪でも公式に音楽の一部を手掛けている。2002年 FIFAワールドカップの公式アンセムのほか、バレエ音楽や舞台音楽などの仕事も多い。

ヴァンゲリスことエヴァンゲロス・オディセアス・パパサナシューは、ギリシャのヴォロス生まれ。4歳でピアノを始め、6歳にして人前で自作曲を演奏する天才ぶりを発揮。正式な音楽教育は受けていなかったそうだが、20歳頃からTV番組の音楽制作に関わるようになり、64年にビートルズに感化された4人組:FORMYNX(フォルミンクス)を結成している。レパートリーのほとんどはヴァンゲリス作曲で、翌年には10万枚のセールスを記録するヒットも出しているらしい。67年には新バンド;パパサナシュー・セットを結成し、これがパリでアフロディーテス・チャイルドに進化。68年、パッヘルベルのカノンをポップに編曲したシングル<Rain and Tears(雨と涙)>をヨーロッパや日本で大ヒットさせ、2枚のアルバムを発表。新約聖書の『ヨハネ黙示録』をモティーフにした72年の3作目『666(アフロディーテズ・チャイルドの不思議な世界)』が高い評価を受けるが、バンドはアルバムのリリース時には既に解散状態にあった。

ヴァンゲリスは『666』リリース前からソロ・プロジェクトをスタートさせていたが、それが本格化したのはRCAと契約した75年『HEAVEN AND HELL』から。ロックとクラシックが融合した傑作とされるこのアルバムには、イエスのジョン・アンダーソンがヴォーカルでゲスト参加している。両人はその前年に知り合って意気投合。リック・ウェイクマンが抜けたイエスのキーボード後任として、ヴァンゲリスの名が挙がった。実はカナザワがヴァンゲリス・パパサナシューの名を知ったのも、この時。結局 音楽家ユニオンの問題でヴァンゲリス加入は成らず、パトリック・モラーツがイエスに参加するが、代わりにジョン&ヴァンゲリスの蜜月が始まり、80年作『SHORT STORIES』を皮切りに、約10年で4枚の共演作が生まれていく。

ソロ活動の方も、76年『ALBEDO 0.39(反射率)』、77年『SPIRAL(螺旋)』、78年『BEAUBOURG (霊感の館)』、79年『CHINA(中國)』、79年『OPERA SAUVAGE(野生)』、80年『SEE YOU LATER(龍表現)』とコンスタントに制作。自分が初めて聴いたソロ作は、ドラマチックな『SPIRAL』だったか。そしてこの後に『炎のランナー』のヒットが続き、作曲家としてのスタイタスを確立していく。ソロ・アーティストとして表舞台に立つことが少なくなったため、日本ではもはや過去の人扱いする輩がいそうだが、ヨーロッパでは巨匠の位置付けにあることを再認識して欲しいところだ。

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