police_around the world

ポリスがビッグ・ネームに上り詰めていく以前、デビューから間もなくの79〜80年に行なった初めてのワールド・ツアーのドキュメンタリー『AROUND THE WORLD』が、レストアを経ての初Blu-ray化。CDとの2枚組で、そちらには同ツアーの未発表ライヴ音源が12曲。どちらも初来日時、伝説の京都大学西部講堂ライヴ(80年2月)が収録されているのがミソだろう。08年の東京ドームでの再結成ツアーとかも観に行って、それなりに楽しんだけど、何か物足りないと思ってしまったその原因が、この初期ドキュメントを観るとよく分かる。要はこの疾走感、破竹の勢いあってこそのポリスだったんだな、自分にとっては。

収録されているのは、日本に始まり、香港〜オーストラリア〜インド〜エジプト〜ギリシャ〜フランス〜南米〜米国でのライヴ・パフォーマンスと、現地の名所を訪れたり、世界の料理に舌鼓を打ったり、ファンとも気軽に交流するオフショット、リハーサル映像が含まれる。売れっ子になってからはあり得ない密着度で、デビュー直後の若々しさや嬉々として旅をする初々しさにニヤニヤ。ちょっとしたトラブルに見舞われることもあるが、それが当時の生々しさを醸し出していて、実に興味深い。ギターのアンディ・サマーズが相撲部屋を訪れ、ホントにまわしを付けて力士に挑む図なんぞ、後のポリスでは考えられない。本編は80分ほどで、ライヴ完奏もないが、それを補って余りある臨場感。演奏目的の方は、ボーナス映像で京都・香港での4曲フル・ヴァージョン、CDでは京都6曲にロンドンと香港のライヴが楽しめる。

今ではポリスをパンクだという人はいないだろうが、デビュー当時は、時代背景もあって、完全にパンク・バンドの衣を被ってデビューした。でもアンディ・サマーズやスチュワート・コープランドにはシッカリしたキャリアがあって、他のパンク・バンドとは一線を画していた。主流パンク・バンドに乗れなかった自分が、ポリスやストラングラーズはかなりマジメに聴いていたのは、結局そういうコトなんだと思う。でもこのワールド・ツアー・ドキュメントで見られる面々は、オトナっぽさと無邪気なところが同居していて、やんちゃな好青年集団そのもの。

だいぶ前にTVか何かで観た記憶があるし、断片的な映像はアチコチで観られるけれど、『SYNCHRONICITY』の頃やソロになってからのスティングしか知らないロック・ファンは、一度通して観ておいて損はない内容だと思う。