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心洗われる歌声:ルーマーの最新リリースは、2015年にリリースされた『B SIDES AND RARITIES Vol.1』の続編。よくカレン・カーペンターになぞらえられるけど、カレンのように育ちの良さが滲む上品さとはちょっとだけ違っていて、苦労の末に辿り着いた深みのある穏やかさ、とでも言うかな。パキスタン生まれの英国人で、出自の複雑さやホームレス寸前の暮らしを送っていたと言う数奇な育ちが、自分の刷り込みになっている面は否定できない。が、少し前に流行っていた表向きだけのオーガニック系カヴァー・ソングの底の浅さとは、根本から異なる味わい。同じ弾き語りでも、彼女のヴォーカルには、歌唱力とは違った次元の歌ヂカラや吸引力がある。

収録曲としては、<Roses>と<Old-Fashioned Girl>が、14年作『INTO COLOUR』に用意されたものの、未発表になっていた楽曲。バカラックの3曲<Wives and Lovers> <The Windows of The World> <Anyone Who Had A Heart>は16年発表のバカラック集『THIS GIR'S IN LOVE』のアウトテイク。エルトン・ジョン作<Mona Lisas and Mad Hatters>とヴァン・モリソン<I Wanna Roo You>は、12年のオリジナル・アルバム2作目『BOYS DON’T CRY』のアウトテイク。ペギー・リーの代表曲となっているスタンダード<The Folks Who Live on The Hill>は、彼女の100歳記念でレコーディングされたもので、近年ではダイアナ・クラールやベット・ミドラー、エリック・クラプトンまでが広く取り上げている。<My Lover Lies Under>は、とある映画用に依頼されてレコーディングしたものの、使用されなかった楽曲だそうだ。

個人的にソソられるのは、シットリとピアノとストリングで歌われるビー・ジース<How Deep Is Your Love>。それにカーリー・サイモン『BOYS IN THE TREES(男の子のように)>からのカヴァー<You’re The One>も嬉しい。<Where’ve You Been?>はキャシー・マテアのトップ10カントリー・ヒットで、ロック・ダウン中に英BBCラジオ向けに録音された。<Never Arrive>は、2020年のスタジオ最新作『NASHVILLE TERAS (The Songs of Hugh Prestwood)』完成後に録ったヒュー・プレストウッドのナンバー。

最近は、今の曲にギター・ソロは要らないと言われたりとか、元・著名プロデューサーが “tiktokでハズらせるにはアタマ15秒が勝負でイントロは不要” と発言したりとか。長く歌い継がれていく音楽と、いまヒットを狙って作られる音楽がまったくの別モノだということを、もっと世間が認識してほしいところ。ルーマーのコレとか聴いて、顔を洗って出直してこいヨ、と思っちゃうな