clapton_blues

どっひゃぁー、クラプトン様、失礼しました。『LADY IN THE BALCONY : Lockdown Sessions』を観たせいか、程よく枯れたブルース・ライヴ・アルバムだと思っていたら、こりゃー完全にお門違い。ワタシ、舐めてましたわ。確かに94年11月のライヴなので、27〜8年前の収録。でもコレって『FROM THE CRADLE』のツアーだよね? あれって結構渋くて、ゆるーいブルース・セッション・アルバムだったような記憶なんだけど…。

ところがこのライヴ・アルバムの熱気たるや 全17曲中およそ10曲ほどが『FROM THE CRADLE』からなのに、印象はかなり違う。エルモア・ジェイムス<It Hurts Me Too>なんて、ギター弾きまくりでシャウト寸前の歌い回しだし、<Five Long Years>や<Sinner's Prayer>のプレイやヴォーカルも、メチャクチャ熱くて…。今までクラプトンのライヴ・アルバムでは、75年発表『E.C.WAS HERE』がサイコーだと信じて疑わなかったけれど、自前の曲を演っているコトを除くと、演奏内容自体はコチラの方がエモいかも。クリーム時代はナイーヴな歌声だったクラプトンが、ココまでガッツリ歌い込んだり、ファルセットが出せるようになったコトにも驚かされる。

アンディ・フェアウェザー・ロウ(g,vo)、ジェリー・ポートノイ(harmonica)、クリス・ステイントン(kyd)、デイヴ・ブロンズ(b)、ザ・キック・ホーンズ(horns)というバック・バンドは、『FROM THE CRADLE』のレコーディング・セッションのまま。ドラムのみ、ジム・ケルトナーからアンディ・ニューマークにスイッチしている。ツアーはアリーナ中心に組まれていたらしいが、その終盤で、ブルースを演るに相応しいクラブ公演をブッキング。サンフランシスコのフィルモア・ウエストでの2ステージを撮影・録音した。会場にはカルロス・サンタナ、ニール・ヤング、ボズ・スキャッグス、ジェリー・ガルシア、ボブ・ウィアー、それに若き日のメタリカのメンバーなどが来ていたという。

ライヴ映像はマーティン・スコセッシがエグゼクティブ・プロデュースを務め、インタビューなどを交えてドキュメンタリー化。95年にUSでオンエアされ、エミー賞にノミネートされた。そのサントラ盤的なポジションで作品化されたのが、このライヴ・アルバムだ。自分はひとまずCDを手にしたが、映像作だとどうしても動くクラプトンに気を取られしまうので、ライヴ盤にして正解だったかもしれない。それくらい、クラプトンの迸るようなブルース熱がダイレクトに感じ取れるライヴ・アルバムだ。どうもサブスクリプションではひと足先にリリースされていたらしいが、今までアルバム化されてなかったのが恨めしいほどの充実作。サスガに現在のクラプトンでは、ここまで入れ込んだステージは期待できないから、パフォーマーとしての絶頂期を捉えた貴重なライヴとも言えるだろう。