journey_freedom

前作『ECLIPSE』から11年ぶり、いろいろゴタゴタが続いたジャーニーから、ようやくニュー・アルバムが届いた。フィリピン出身のアーネル・ピネダがヴォーカリストに抜擢されての3枚目。彼と両翼たるニール・ショーン(g)、ジョナサン・ケイン(kyd)は健在だが、2017年来日時のリズム隊(スティーヴ・スミス、オリジナル・メンバーのロス・ヴァロリー)は脱退し、その後任として復帰のランディ・ジャクソン(b)、プロデューサーとしても大物のナラダ・マイケル・ウォルデン加入が発表された。この2人、ナラダがソロ・アーティストとしてR&Bチャートで活躍していた頃のナラダ・バンドのメンバーでもあり、思わず期待を込めてしまったが、予定していたツアーがパンデミックで流れ、リスケされたツアーでは体調不良のランディがマルコ・メンドーサにスイッチ。それも間も無くテッド・ジェンセンに引き継がれている。ナラダもやはり体調不良で、ツアーは元メンバーのディーン・カストロノヴォがサポートに付いて、ツイン・ドラム体制でツアーを敢行。その後やっぱりナラファは抜けて、ディーンが一人でその屋台骨を支えるコトになった。

そんな中でリリースされた、この『FREEDOM』。レコーディングはナラダとランディがいた時に行われたようで、ツアー・メンバー(kyd, back vo)を務めるジェイソン・ダーラトカもコーラスで参加している。1曲だけ現ドラマーであるディーン・カストロノヴォが得意のパワー・ヴォーカルを披露しているが、これはアーネルで完成していたトラックを、ディーン復帰後に差し替えたモノだろう。

興味深いのは、ニールとジョササンの2人でほとんどの楽曲を書いていた『ECLIPSE』に対し、多くの楽曲でナラダも曲作りに名を連ねていること。彼がプロデュースに参画するのは、実績を考えれば当然のことだと思うが、15曲中12曲でナラダが2人と肩を並べている。おそらくコレは、大物ナラダがジャーニーに加入するにあたっての条件のひとつだったに違いない。ちなみにランディも2〜3曲クレジットあり。ブックレットでハッキリ正式メンバー扱いされているのは、ニールとジョナサン、アーネルの3人だけで、他はアルバム・ミュージシャンとして記載されている。

で、肝心のアルバムの内容。ま、ハッキリ言って凡庸ですね、ジャーニーとしては…。往年のベテラン・グループ 久々の作品としては上々の出来だと思うし、他の同系グループの近作に比較すれば、十分に納得できる作品だと思う。そうした意味では、ジャーニー・ファンなら手にして満足!だろう。スティーヴ・ペリー在籍期はどうしたって彼の個性的ヴォーカルに頼らざるを得なかった、というか、結果的にそうなってしまっていたし、それがひとつのジャーニー評価基準になってしまい、ブランクを経ての活動再開後は。過去の自分を相手に悪戦苦闘している感。もちろんアーネル参加後もそうだったけど、彼のジャーニー愛が広く浸透したか、新曲では無理にスティーヴ・ペリーに寄せなくても文句を言われなくなった気がしていた。他のメンバーもそんな彼をあたたかくサポートする感じで、だからこそソックリさんを入れたバンドの草分けとして、高く評価されたのだと思っている。

そうしたバンドの一体感は、ここでも健在だ。ただ楽曲がちょっと小粒で、往年のビッグ・ヒットを自分たちでコピーしているような…。アーネルのヴォーカルで、グレイテスト・ヒッツ・ライヴ物を出していたので、もうその段階は通過したと個人的に思っていたが、やはりコロナ禍で、焦燥感があったのだろうか。新たなケミストリーを呼ぶには程遠く、ひとまず こんなのできました!というような、現況報告の小さくまとまった作品に思える。グループとしてやるべきコトはやっているけど、それ以上でもそれ以下でもない。熱心なジャーニー・ファンはともかく、いろいろ幅広く聴いているリスナーだと、「アーネルのいるジャーニーでも聴くか!」と思っても、このアルバムには手が伸びない。そんな気がするな。今時ドキ、全16曲70分超のフルスペックも無駄に長いと感じるし、だったら曲数を絞り込んでジックリ作った方がベだったのは?と思う。ジャーニー・クラスの大物であれば、コロナ禍でも、もっと先へ行っちゃって欲しかったし、行けるだけのチカラを持っているはず。少し前までTOTOと一緒にダブル・ヘッドライナー・ツアーで全米を回っていたようだけれど、某バンドのような壮大なノスタルジック・バンドにはなって欲しくはないのだ。