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AORシンガーとかブルー・アイド・ソウル・シンガーというよりは、もうほぼジャズどっぷりのマリリン・スコット、2016年『STANDARD BLUE』から約6年ぶりのニュー・アルバム。メジャーのワーナーに入社した96年以降はジャズに転向し、日本のヴィーナス・レコードから出したアルバムなどは、オーセンティックなジャズ・スタンダードに浸かりきった印象だったが、20年も演って少し飽きが来たのだろうか。旧知のラッセル・フェランテ、マイケル・ランドウ、ジミー・ハスリップらと組んだ前作では、ジャズ・スタンダードのカヴァーでも、なかなか新鮮かつ内省的なアレンジを施していたのが印象的で。

この新作も、6年のブランクがあったのでどうなってるか?と思ったが、ありきたりのジャズ・ヴォーカル物にはなっておらず、ひと安心。レーベルも、盟友ラッセル・フェランテやジミー・ハスリップ、スティーヴ・カーンらが籍を置く新興ブルー・カヌー(Blue Canoe)へ移籍。全曲書き下ろしの新曲で固めた、ポジティヴなアルバムを完成させた。

このプロジェクト・リーダーは2人いて、一人はもちろんラッセル・フェランテ。彼はマリリンと3曲共作し、ジミー・ハスリップ、アレックス・アクーニャ、スティーヴ・カーンらとセッション。<The Sue>では何とビックリ、お懐かしやの4人姉妹ヴォーカル・グループ:ペリ・シスターズとの共演で、ゆったりとしたジャズ・バラッドを聴かせる。

もう一人は、元トライバル・テックのkyd奏者スコット・キンゼイ。マリリンは彼とも3曲書いていて、ジミー・ハスリップはコチラでも。ドラムにはヴィニー・カリウタやゲイリー・ノヴァック、サックスでスティーヴ・タヴァグリオーネも参加している。新鋭ローガン・ケインのウッド・ベースをフィーチャーしたトリオ編成のタイトル曲<The landscape>は、何処かパット・メセニー・グループ的テイスト。そしてマリリンとフェランテ、キンゼイの3人が共作した<Irreplaceable>では、両人の鍵盤に、ハスリップ、カリウタが揃い踏みで、マイケル・ランドウの空間ギターが自在に宙を飛び交う。ウ〜ン、鉄壁です。

アルバム自体のプロデュースはジミー・ハスリップなので、だから若いスコット・キンゼイと盟友フェランテを併用できたと推察できる。もはやマリリンがAORを歌うことはないかもしれないが、型にハマったジャズ・スタンダードを歌うより、自前のジャズ・チューンを書いて搦め手で攻めてくるスタンスが嬉しい。