generation radio

クラシックな80年代ロックを蘇らせる。そんな目的を持って結成されたジェネレーション・ラジオのデビュー・アルバム、到着。メンバーは、元シカゴのジェイソン・シェフ、ジャーニーのディーン・カストロノヴォ、ラスカル・フラッツのジェイ・ディマーカス、ナッシュヴィル界隈でセッション・ギタリストとして活躍するクリス・ロドリゲスとトム・ヤンクトンの5人。「ラスカル・フラッツとジャーニーとシカゴを融合させるというアイディアから始まり、そのテーマに沿った特別に書かれた曲をまとめ上げた」(ジェイソン・シェフ)

でも、ジェイソンは「ラスカル・フラッツとジャーニーとシカゴを融合」と語っているが、本当にこのグループを動かしているのは、ジェイソンとジェイ・ディマーカス。実はこの5人が集まったのは、ジェイソンが2020年に出した2枚目のソロ・アルバム『HERE I AM』の日本盤ボーナス・トラック<The Memory Survives>のデモ・トラック制作が最初だ。日本盤はUS盤から1年近く遅れてのリリースだったが、その間にこの顔触れが揃い、The Rise Aboveの名前でライヴ配信。メンバー絡みの有名曲を中心にセットが組まれた。もうその時には「翌年(2021年)にはアルバム・リリース」という話が出ていたから、コロナの影響か、当初の予定よりも遥かにリリースが遅れてしまったワケだ。元メンバーのジェイソンはもちろん、ジェイはシカゴ『XXX』のプロデューサー。トム・ヤンクトンも『XXX』にギターで参加している。そしてクリス・ロドリゲスはケニー・ロギンスのツアーのほか、ピーター・セテラとも来日していた。何のことは無い、ほとんどのメンバーがシカゴ及びその周辺に関わっていたワケだ。

そうこうするうちに、ジャーニーに新規加入したはずのナラダ・マイケル・ウォルデンが体調不良となり、ディーンがセカンド・ドラマーとしてグループに呼び戻されることに。しばしダブル・ドラム体制でツアーをこなしたものの、ナラダはそのまま脱退。結局ディーンの正式復帰が決まり、ジェネレーション・ラジオの方は、正式デビュー前から欠員が出てしまった。

…とまぁ、いきなりつまづいてのデビューとなったジェネレーション・ラジオ。でも作品の方は,もうまったく破綻などなく、完全に予定調和の商業ロック・ワールド。5人全員がリード・ヴォーカルを取れるのが強みで、ジェイソンがリードを取ると、まったくのシカゴ調。ジェイが歌うと、ややノーブルなポップ・カントリー調になる。対してディーンのヴォーカル曲は、楽曲によってジャーニーっぽくなったり少し離れたり。もっとも彼は元々ジャーニーのメイン・ヴォーカルではないワケで、バランスとしてはちょうど良いかも。<Time To Left It Go>みたいな速い曲があるのには若干驚いたが、コレ、意外にもトム・ヤンクトンのヴォーカル曲。この人、カントリー・ポップ系のギター弾きかと思っていたら、本当に演りたいのはややハード・ロック寄りみたい。<I Hope You Find It>はマイリー・サイラスのサントラ曲のカヴァーで、ジェイソンがヴォーカル。ラスカル・フラッツ、クリスのソロ・アルバムからのセルフ・リメイクも入っている。

こうした80年代ロック系のキャリア組が集まったバントというと、ナイト・レンジャーやダム・ヤンキースを思い出すが、ポップ・カントリー出身やセッション・マンもいるせいか、その2組よりもヴォーカル・メインの印象。その分アクは少なめだけれど、聴きやすさは高い気がする。でもこうして聴くと、やっぱりジェイソンのヴォーカルって、破壊力があるな。ただ日本盤ボーナス曲がシカゴ<Will You Still Love Me>のライヴと聴くと、またかヨと思うけど。

ジャーニーに出戻ってしまったディーンの後任は、アヴェレイジ・ホワイト・バンド〜トム・ペティ&ハートブレイカーズのスティーヴ・フェローニで、既にこのラインナップでツアーを行なっているらしい。まぁ、格としては申し分ないけど、80年代ロックというバンドのキャラクターに合うかどうか…。シュアだけど、ディーンみたいな迫力やスケール感はないから、ちょっと小さくまとまっちゃうかな? 何れにせよ、懐メロ・バンドでは終わって欲しくないニュー・グループ登場である。