future flight

世間的にはオリヴィア・ニュートン・ジョンの訃報に胸を痛めた人が多いようだが、個人的には、その陰に隠れ気味になってしまった職人ソングライター:ラモント・ドジャーの逝去に心が疼く。そこで久しぶりにリイシューされたフューチャー・フライトの、81年リリース、ワン&オンリー作を手に。グループ自体、謎が多くて未だに実態がよく分からないのだが、そのためその唯一作のプロデューサーで、曲作りにも全面協力しているラモントの系譜で語られる連中なのだ。

グループ・メンバーとしてクレジットされているのは、サイ・ジェフリーズ(Vo.g)、デヴィッド・スワンソン(vo,kyd)、ブリンウッド・タナー(g,b)、アンソニー・パトラー(b,kyd,g)の4人で、バック・ヴォカルは全員で受け持つ。曲作りはラモントが全曲に名を連ね、<Hipnotic Lady>など、3曲が彼の単独書き下ろし。他はラモントとメンバーらの共作になっている。

6月のリイシュー盤は、廉価企画のため、01年に拙監修で初CD化した時のJAM氏の解説が流用されている。が、この20年間で音楽系データベースもそれなりに充実してきて、現在はメンバーの動向も少し明らかになってきた。

まずフューチャー・フライトの4人のメンバーのうち、サイ・ジェフリーズを除く3人は、ラモントの81年作『LAMONT』に参加。ブリンウッド・タナーは、本名なのかフランク・ドゥークンを名乗り、その後エンジニアに転身した。アンソニー・パトラーは主にトニー・パトラー名で、本作にも数曲共作者としてクレジットされているデヴィッド・チャドウィックと一緒に、ジェネラル・ケインに加入。セッション・マンとしてはジャネット・ジャクソンやマイケル・マクドナルド、チャカ・カーン、チコ・デバージ、ジョージ・マイケルなどをサポートしている。

そしてヴィッド・スワンソンは、どうやらクインシー・ジョーンズに認められたらしく。クインシーの下で、フィリップ・イングラム(ジェイムス・イングラムの兄弟)とアタラ・ゼイン・ジャイルズの元スイッチ組、サイーダ・ギャレット(元プラッシュ)、キップ・レノン(現ヴェニス)と共に5人組ディーコ(DECO)を結成。クインシーのレーベル:クエストが85年に作ったサントラ盤『FAST FORWARD』に、ディーコおよびソロ・シンガーとして参加。サイーダとデュエットするなどの活躍を見せた。しかしディーコはすぐに分裂。翌年デビュー作『FRESH IDEA』を出した時は、既にフィリップとアタラのツー・メン・ユニットに変貌している。その後もブレンダ・ラッセルやペリ・シスターズらのセッションに参加していたようだ。

それにつけても<Hipnotic Lady>の涼やかなメロディったら 個人的には、ナイトフライト<If You Want It>に匹敵する名曲だと思う。他にもチラホラ良い曲があるけれど、ココはもう、<Hipnotic Lady>1曲で充分なほど。