lonette mckee

約1年半ぶりに、ウルトラ・ヴァイヴで米サセックス・レーベルのリイシュー第2弾がスタート。サセックスは、70年代前半の米西海岸を拠点にしたソウル・レーベルで、ビル・ウィザーズを輩出したことで知られる。オーナーの故クラレンス・アヴァントは、“ブラック・ゴッドファーザー”と異名を取った黒人社会の有力者で、音楽業界のみならず、映画産業やスポーツ界、そして政界にも顔が効いたとか。サセックスに続いて、S.O.S.バンドやジャム&ルイスを輩出するTabuを設立したことでも知られていた。前回リイシューはクリエイティヴ・ソースとかソウル・サーチャーズ、シャロン・リドリー、フェイス・ホープ&チャリティーあたりが再発されたが、今回はココでハウス・プロデューサー的に活躍したギタリスト:デニス・コフィーの作品を中心に、ウィリー・ボボ・アンド・ザ・ボージェンツやシンガーのズレマなどが再発。自分も、ロネット・マッキーの解説を仰せつかった。

ロネットは女優でシンガー・ソングライターの実績を持つ才媛。デトロイト生まれで、父はアフリカン・アメリカン、母はスウェーデン出身。12~3歳でデビューし、ローカル・ヒット。それを手掛けたのが、デニス・コフィーとマイク・セオドアのコンビだった。

先に女優デビューした姉を追ってL.A.に来たロネットは、そこでコフィーとセオドアのコンビに再会し、まずはこのアルバムで、シンガーとして再デビュー。4曲を自ら書き下ろしている。彼らもそれに呼応して手練れのミュージシャンを招集。ギターにラリー・カールトンとデヴィッド・T・ウォーカー、ディーン・パークス、レイ・パーカーJr、キーボードにジョー・サンプルとクラレンス・マクドナルド、ソニー・バーク、ドラムにジェイムス・ギャドソン、オリー・ブラウン、ベースにジェイムス・ジェマーソンとウィルトン・フェルダー、サックスにアーニー・ワッツ、そしてコーラス陣にメリー・クレイトンらが参加した。しかもデヴィッド・T.ら各ソリストが迫真のプレイを繰り広げていて、何処かマリーナ・ショウの75年作『WHO IS THIS BITCH, ANYWAY』にイメージが重なる。

作家陣もアル・ジョンソンの提供が2曲。シングルになった<Save It (Don't Give It Away)>は、ソウル・フリークならご存知のJeffreeが、兄弟ユニット:スリー・オブ・ア・カインド名でサセックスに吹き込んでいた楽曲だ。更にスリー・ドック・ナイトやキャプテン&テニールのカヴァーもあって、やはりヨーロッパの血筋を感じさせる。74年リリースだから、パティ・オースティンやランディ・クロフォードらの先駆けとなるような、クロスオーヴァー系の女性ヴォーカリストだったのだ。ロネットが女優として人気を確立するのは、本作から2年後の76年、ミュージカル映画『SPARKLE』の成功がキッカケである。