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6月に出た【Throwback Soul ソウル/ファンク 定番・裏名盤・入手困難盤 70年代~打ち込み前夜編】から。輸入盤CDもあったので、それほど待たれていた感はないけれど、これはフィーチャー・フライト同様に聴き逃し厳禁の一枚。ナタリー・コールといえば『UNFORGETTABLE』が代名詞になってしまっているるが、それはそれ。他にもっとイイのがあるよ!と差し出したくなるアルバム。これがその77年の4作目『THANKFUL(幸福)』である。

プロデュースは、当時新婚の夫マーヴィン・ヤンシーとチャック・ジャクソン。アレンジにはシカゴの重鎮リチャード・エヴァンスを迎えている。ちょうど妊娠が発覚したタイミングで、出産休暇に入る前に予定されていたツアーをこなしてライヴ・レコーディング(翌年発表)。そのあとスタジオ入りして、このアルバムが作られた。『THANKFUL』というタイトルは、そのまま当時の彼女の心持ちだった。

その昂揚感はアルバムにも反映されていて、全編よくできたシティ・ソウルで。メアリー・J・ブライジがカヴァーするバラード<Our Love>がR&Bチャート首位、ポップ・チャートでもトップ10入りし、当時のナタリー人気の高さを証明している。また<Just Can't Stay Away>も、アン・ヴォーグが取り上げたドリーミーなミディアム・スロウの好曲。

でもココで一番のオススメは、“浜辺のサンバ”なる邦題を与えられていた<La Costa>と、ビート・チューンの<Be Thankful>。とりわけ<La Costa>は、ソロ作もあるkyd奏者リンダ・ウィリアムスが提供したはボサノヴァ・スタイルのナンバー。波の音がイントロにあしらわれていて、情景が瞼に浮かんでくる。レア・グルーヴ/DJ人気が高いのも、この曲。シティ・ポップ・ブームで今をトキめく松下誠も、ミルキー・ウェイ 時代に Cover していた。

バック・メンバーには、当時のナタリー・バンドにいたリンダ他、ソニー・バーク(kyd)、ジェイムス・ギャドソン/ポール・ハンフリー(ds)、レイ・パーカーJr./リー・リトナー(g)といった手練れも多く、ナタリーの歌も小気味良くパンチを効かせている。それでいて、ビッグ・バンド調の<Lovers>でアルバムをスタートさせるあたり、ジャズとソウルとポップスを自在に行き来したナタリーらしい。そ右下クロスオーヴァー感覚を最も自然に効率よく表現できて、なおかつシーンにも受け入れられる。そういう恵まれた時代だった。

今なら廉価で国内盤CDがゲットできるので、まだの方はお見逃しなく。