el debarge

ユニバーサル【Throwback Soul 〜ソウル/ファンク 定番・裏名盤・入手困難盤】シリーズの第2弾『打ち込み導入〜NJS前夜編』から、エル・デバージ、86年発表の1st ソロ。CDが結構レアだったので、待っていたファンも多いだろうな。ただしサウンド的には、当時の典型的ブラック・コンテンポラリー。ソウル〜R&Bというより、AOR〜ポップス色が強い。エル自身のヴォーカルはマーヴィン・ゲイ直系のナイーヴなスタイルで、ファルセットが武器。90年代以降のソロ作はそれを全面に打ち出すが、この頃は幅広くクロスオーヴァー・ヒットを狙っていたせいか、そこはあまり強調していない。


エルことエルドラ・デバージは、ジャクソン5路線を狙ったファミリー・グループ:デバージで、81年デビュー。<I Like It>など、現在も人気の高いヒット曲をいくつか出した。が、85年の4作目『RHYTHM OF THE NIGHT』から、サントラ関係曲でラテン・ポップ指向の<Rhythm Of The Night>、デヴィッド・フォスター/ジェイ・グレイドン/ランディ・グッドラムが共作したAORバラード<Who's Holding Donna Now>が連続で全米トップ10入り。それが逆にデバージの分裂を招いた。

独立したエルの初ソロ作は、『RHYTHM OF THE NIGHT』のスタイルを踏襲。制作を引き継いだカタチのジェイ・グレイドンが、アル・ジャロウに通じるメロウ・ミディアムでロビー・ネヴィルとの共作<Someone>、フォスター/グッドラムとオケと作った<When Love Has Gone Away>、ジェイとグッドラム共作でリチャード・ペイジがコーラス参加の<Lost Without Her Love>など、4曲をプロデュースしている。軽い裏ノリの<Thrill Of The Chase>では、ジェイらしいギター・プレイがふんだんに。

またデニス・エドワーズやコモドアーズあたりの仕事でモータウンが信頼を得ていたピーター・ウルフ、ロビー・ブキャナンも、それぞれ2〜3曲ずつプロデュースを担当。フランク・ザッパのバンド出身のピーター・ウルフは、この頃スターシップやワン・チャン、セルジオ・メンデスらのプロデュースで飛ぶ鳥落とす勢いだった。ココでも夫婦ユニット:ウルフ&ウルフで活躍していた奥様イナと書いた<Who's Johnny>(全米3位)、ようやく作曲家として売れ始めていたダイアン・ウォーレン提供の2曲<I Wanna Hear It From My Heart><Don't Say It's Over>をカタチにしている。どの曲にもダン・ハフをギターに、マイケル・マクドナルド、サイーダ・ギャレット、フィル・ペリー、フィリップ・イングラムらをバック・ヴォーカルに起用しているのも注目。とりわけ<Don't Say It's Over>のコーラス・アレンジは一聴の価値あり。

ロビー・ブキャナン編曲の2曲<Secrets Of The Night>と<Private Line>も、実はダイアン・ウォーレン楽曲。前者は彼女とアルバート・ハモンド共作だ。ダン・ハフはここでも引き倒しているが、<Secrets Of The Night>ではプリンス・ファミリーのヴァニティ、<Private Line>ではトミー・ファンダーバークとトム・ケリーが歌っている。

そしてもう1曲が、バート・バラカック/キャロル・ベイヤー・セイガー夫妻(当時)がプロデュース&アレンジの<Love Always>。作曲は夫妻とブルース・ロバーツで、当時の彼らが手掛けたマイケル・マクドナルド&パティ・ラベル<On My Own>路線。これもR&Bチャート7位/全米43位とヒットした。演奏陣もデヴィッド・フォスター、ロビー・ブキャナン、ジョン・ロビンソン、ダン・ハフと豪華。

それこそモータウンの力の入れようが伝わってくるような豪勢な作りだが、実際エルはポスト・マイケル・ジャクソンを担わされ、そのプレッシャーからか徐々にキャリアを踏み外し、破産宣告やドラック問題を引き起こした。90年代以降のソロ作は、たった3枚。2010年の『SECOND CHANCE』なんて素晴らしかったのに、来日予定が流れたりして、思うように活動ができていないのが残念だ。