cheap trick live 77

ガイド本が出て、制作に関わっていたCDも発売されて、ひと息つけるかと思ったらトンでもない。シリーズ監修モノの作業に単発モノの仕事も重なって、追われっぱなし。忙しいのはありがたいことと理解しつつ、コロナ禍で日課にしていたウォーキングもままならずで、ストレスは溜まるばかり。そういう時は、最近コレ。チープ・トリックのデビュー直後のステージを捉えた『ライヴ1977(OUT TO GET YOU! LIVE 1977』。CD発売は先月末だけど、元々は2年前にデジタル・リリースとレコード・ストア・デイのアイテムとして限定アナログ化。音だけは前から聴けるようになっていた。

チープ・トリックといえば世界的には『AT BUDOKAN』以降。日本では少し早くて2枚目『IN COLOR(蒼ざめたハイウェイ)』(77年)から。だからこそ、新人なのに武道館でコンサートが開けたワケで。

でも自分にとってのチープ・トリックは、その2作目まで。とにかく渋谷陽一のFM番組で耳にしたデビュー盤収録曲<The Ballad Of T.V. Violence>に強かなショップを受け、1stを貪るように聴いた。だからポップに垢抜けた『IN COLOR』には些か拍子抜けしたけど、コレはコレで良いアルバムと好きになり、早速決まった初来日公演へ。ミーハー・ファンが多いのは織り込み済みだったが、ライヴでその熱狂ぶりを目の当たりにして、思いっきり冷めた。「もう、オレみたいなファンは居場所はないなぁ〜」と。まぁ、ヴォーカルのロビン・ザンダー自身もアイドル視されて戸惑っていたらしいけど、クレバーで苦労人のリック・ニールセンは、それを茶化して楽しみつつ、バンドの成功を虎視眈々と狙っていたに違いない。

そういうワケで、世間とは逆に、『AT BUDOKAN』以降はアルバムが出たら半ば義務的にチェックするだけに。しばらく冷めた目で見ていたが、また面白く感じてきたのは90年代あたりか。個性派集団なのにまったくブレず、パワー・ポップとして再評価されるようになったのは、「継続は力なり」を強く感じさせる。

で、今、こんなライヴ・アルバムが。自分のチープ・トリック熱の原因<The Ballad Of T.V. Violence>は、当時のライヴでしか歌っていないレア曲。実は『OUT TO GET YOU! LIVE 1977』のオリジナルであるデジタル版には未収で、この国内盤CDにはボーナス・トラックとして追加された。ぶっちゃけ、これ1曲のために買ったようなモノである。とはいえ初出音源というワケではなく、96年発表のボックス『SEX, AMERICA, CHEP TRICK』に入っていたのだけれど。

それにしても、この時のチープ・トリック、疾走感が凄まじい。特にロビンのヴォーカル。美少年ルックスとは裏腹に、ドスの聴いたパワー・ヴォイスからファルセットまで自由自在で、リックがロビンだけは手放さない理由が分かる。当時この人をアイドル視していた女性ファンたちは、一体何を聴いていたのか? いや逆に、入り口がたまたま見てクレだっただけで、こういうスゴイのも聴いているうちに、総じて音楽ファンの耳が肥えていったのかもしれないな?