donna summer 40th

ドナ・サマーがクインシー・ジョーンズと手を組んだことで音楽界の話題をさらった82年のアルバム『DONNA SUMMER(恋の魔法使い)』が、 40周年記念再発。デラックス・CD・メディアブック・エディションと命名され、DVDサイズの豪華32ページのブックレットにディスクが封入されてくる。最新リマスター&ボーナス・トラック追加と謳われているので、価格設定から てっきりCD2枚組だと思っていたら、実は1枚モノで、ボーナスは7曲。ナンだ、それじゃ〜2014年のリマスター&エクスパンデッド盤と変わらんぢゃないか、と憤慨して 実際ボーナス7曲中4曲はダブリで、今回 新たにシングルが出る<Mystery Of Love 〜 Le Flex "Summer Mystery" Remix>とその別ミックス、<The Woman In Me>の7インチ・ヴァージョンが初CD化になる。アナログも追って出るようだ。

作品的トピックとしては、ゲフィン移籍後の2作目で、しかも手取り足取りで一緒に数多のディスコ・ヒットを放ってきたジョルジオ・モロダーと離れた最初の作。そこでプロデューサーとして波に乗るクインシーに声を掛けた。クインシー的には、マイケル・ジャクソン『THRILLER』とほぼ同時の作業。自ずと参加ミュージシャンや作曲ブレーンは重なって、ロッド・テンパートンにデヴィッド・フォスター、TOTOからデヴィッド・ペイチ、ジェフ&スティーヴ・ポーカロ、スティーヴ・ルカサーの4人、グレッグ・フィリンゲインズ、マイケル・センベロ、ルイス・ジョンソン、ンドゥグ・レオン・チャンクラー、デイヴ・グルーシン、シーウインド・ホーンズらがクレジットされている。

でも結果から言うと、このアルバムには失敗作という悪いイメージが付きまとっていて。その前の4作中3作、『LIVE AND MORE』『BAD GIRLS』『ON THE RADIO 〜GREATEST HITS』がアルバム・チャート連続首位。だが直近の『THE WONDERER』が13位止まりで、そこからジョルジオ・モロダーと手を切ることになった。だからクインシーもドナも目一杯チカラが入っていたはず。それなのに、先行シングル<Love Is In Control>は、前作シングル<The Wonderer>の全米トップ3に届かず、ベスト10入りがやっと。後続シングル<State of Independence>や<The Woman In Me>に至っては、トップ30前後をウロウロという体たらくだった。オマケに、翌83年にマイケル・オマーティアン制作で出した<She Works Hard For The Money>は、見事R&BチャートNo.1/全米3位に躍り出て。さすがのトップ・プロデューサー;クインシーも、たまには手元が狂うのだな。

ちなみに<State of Independence>は、ヴァンゲリスとイエスのジョン・アンダーソンの作曲によるチョッと先進性のある楽曲。クインシーはその少し前にサックス奏者アーニー・ワッツを自身のレーベル:クウェストに迎え、ヴァンゲリスのヒット曲<Chariots Of Fire>をカヴァーさせていたから、これもその流れだろう。何処かアフリカっぽいニュアンスが漂うのは、摩訶不思議なメロディも然ることながら、マイケル・ジャクソンにライオネル・リッチー、スティーヴィー・ワンダー、ディオンヌ・ワーウィック、ケニー・ロギンス、クリストファー・クロス、マイケル・マクドナルド、ブレンダ・ラッセルら、豪華クワイアの存在あるがゆえ。おそらくスティーヴ・ポーカロが弾いているのだろう、<Africa>とまったく同じシンセ・パートも顔を出す。ちょうどこの頃、アフリカのミュージシャン:キング・サニー・アデが注目されたりしたから、「ヒットを作るコツは、流行の半歩先を行くこと」と宣うクインシーは、そうした風潮を意識せずにいられなかったに違いない。

今度の再発で、改めて本作を聴いてみた。が、やはり『THRILLER』のように、すべてがピタリとハマっているワケじゃない。ロッド・テンパートンが書いた<Love Is In Control>は確かにイイ曲で、ジェイムス&フィリップ・イングラムとハワード・ヒュウェット(シャラマー)のコーラスも印象的だが、これはドナよりマイケルに歌わせた方が良かったんじゃないか?、なんて…。繊細ながら声にパンチとスピード感があるマイケルに対し、ドナの歌声はもっと伸びがあって中音域がふくよか。だから少しおおらかに歌う楽曲の方が似合う。でも<Love Is In Control>は、完全にマイケル仕様。合いの手のシャウトなんて、ホント、マイケルそのものだ。

一方で、リチャード・ペイジ&ジョン・ラングと、アース・ウインド&ファイアーのブレーン:ビル・メイヤーズが共作した<Mystery Of Love>は、ジェイムス・イングラムとのデュエットで、ドナによくフィット。どうしてこちらを2ndシングルにしなかったのだろうか? TOTO勢+ペイジス+ビル・チャンプリンがサポートする<The Woman In Me>もイイ感じのメロウ・ミディアム。あまりチャート上位を狙えるタイプの楽曲ではないから、30位止まりは納得だけど。センベロ・ファミリーが活躍する< (If It) Hurts Just A Little>も、少々地味に良かったりして。ロッド・テンパートンとクインシー、デヴィッド・フォスター、ルカサー共作による<Livin' In America>、ブルース・スプリングスティーン提供<Protection>、カーリー・サイモンのジャズ・カヴァーの影響と思しき<Lush Life>とかは、どうもドナとのマッチングが今ひとつ。リンダ・ロンシュタットのオーケストラ共演は、この後のコトである。

ドナのヴォーカルに関しては、歌い口がわざとらしいと嫌うマニアが少なくないけど、黒人特有のゴスペル臭が薄く、軽く歌い飛ばすように聴こえるだけで、実際の歌唱力はかなりのレヴェル。集めた楽曲も総じて悪くないものの、どうもドナの歌と噛み合っていない楽曲が目立つ。クインシーがマイケルに掛かりきりだったからか、ドナに寄り添ってプロデュースしたというより、自分の手法にドナを乗せてしまった感覚。流行の先々を見据えた結果、少し先読みが過ぎたように思える。大ヒットには、予測や計算、予定調和だけでなく、その時の勢いや直感、そして運が必要。ドナのコレは一応のヒットは記録したものの、残念ながら注ぎ込んだバジェットに見合うリアクションは得られなかったのである。