ohtaki 1st

72年に発表された大瀧詠一の1stソロ・アルバム『大瀧詠一』が、50周年記念盤として2枚組拡大ヴァージョンで復刻。タイトルも、当初のアイディア『乗合馬車(Omnibus)』に変更されている。当時の大瀧さんは、はっぴいえんど在籍中。まずは<恋の汽車ポッポ>、<空飛ぶくじら>とシングルを出し、6枚シングルが揃ったところでアルバム化するアイディアを持っていた。だから『乗合馬車(Omnibus)』。しかし彼を取り巻くレーベル事情から、本格的なソロ・アルバムが求められるようになり、このアルバムが生まれることになった。

元々ナイアガラーでもナンでもなく、大滝派? それとも(山下)達郎派?と問われれば、圧倒的に達郎派の自分。『ロンバケ』や『EACH TIME』はリアルタイムで聴いてきたが、同時期の達郎作品に比べると、思い入れは薄い。16ビート系は大好きだけど、オールディーズやドゥワップ趣味は自分にはないのだよ。

でもだからこそ、この大滝さん1枚目は結構好きなアルバムだ。何故なら、ナイアガラア以降では表に出なくなるソウル〜ファンク系譜の楽曲が、かなり多く収められているから。スタックス調の<指切り>、ファンキーなスワンプ・チューン<びんぼう>、ノーザン・ソウル風味の<五月雨>、グルーヴィーな8ビートのロック・ナンバー<あつさのせい>、メジャー7th系のメロウ・フォーク<水彩画の街>、ストリングスを配したスロウ・ナンバー<乱れ髪>といったあたりがそれで、後々ナイガラの柱になっていくノヴェルティ・ソングの類いは、あまり多くない。

このような二面性が詰め込まれたのは、大滝さん自身が、ポップ・ソングにはウェットで叙情的なメロディ・タイプのものと、ドライでアナーキーなノヴェルティものがあるとしていたから。つまりナイアガラ期は後者を推進していたワケで、そこが自分の嗜好とは異なった。『ロンバケ』や『EACH TIME』はもちろんメロディ思考のポップスだけど、同時にシンガーとしての面やウォール・オブ・サウンドを追求したため、ソウル〜ファンク系のリズムの面白さには乏しい。

『風街ろまん』の完成後、すぐにレコーディングに入ったのもあってか、<指切り>や<びんぼう>は細野晴臣:ベース、松本隆:ドラムという はっぴいえんど布陣。この真っ黒なファンキーさは、初めてこのアルバムを聴く大滝ファンには衝撃的だろう。<指切り>のピアノとフルートは吉田美奈子。<五月雨>のドラムは大滝自身で、ベースは大滝のアイディアを元ブルース・クリエイションの野地義行が弾いている。<あつさのせい>では、細野に鈴木茂、林立夫、松任谷正隆のキャラメル・ママが参加。<乱れ髪>のリズム隊も細野・林のコンビである。要するに、はっぴいえんど〜キャラメル・ママ(=ティン・パン・アレー)の流れがそのまま出ているのだ。実際10ヶ月も費やしたレコーディング中に、大滝がはっぴいえんどと並行してソロ活動開始〜メンバーがギクシャク〜はっぴいえんど解散決定、という動きがあったワケで、それが動きがストレートに反映されている。自分のレーベルの立ち上げも本作の反省がキッカケとか。そうした意味で、まさに大滝ソロの原点なのだ。

日本ではシティポップ・オリジネイターとして評価が定着している大滝さんだが、最近注目される海外のシティポップ・ファンの間では、ほとんど無視されているらしい。それは偏に、大滝さん=オールディーズとみなされているから。一方で細野さんは、シティポップのブームとは無縁のところで高く評価がされている。でも海外ファンがこの大滝1stを聴けば、彼のまた違った側面を認識できるんじゃないかな?