santana_caravanserai

バディ・マイルスとの共演ライヴ盤に続く、サンタナ『CARAVAANSERAI(キャラヴァンサライ)』(72年)のクアドラフォニックSQ盤の世界初SA-CDマルチ・ハイブリッド化。『SANTANA』『ABRAXAS』『 SANTANA III』と続いた灼熱の初期ラテン・ロック期から脱却し始めたアルバムで、既にデヴィッド・ブラウン(b)とマイケル・カラベロ(perc)が脱退。ジャズのインフルエンスと東洋思想を盛り込んだ新しいサウンドを提示している。

猛々しいギターとオルガンの唸り、怒涛のパーカッション群で音の壁を築き上げていた初期サンタナ。その3枚とも既にSA-CDマルチ・ハイブリッド版が出ていて、その大迫力にヤラレていた。が、音の組み立てが変わった『CARAVAANSERAI』こそが、もしかして一番マルチ・チャンネルとの相性が良いのでは?、なんて思えてしまう。

…というのも、新しいサンタナ・サウンドは従来に比べて極端に音数が少なく、内省的かつ神秘的。ひとつひとつのサウンド、フレーズがよく吟味され、楽器と楽器のスペースが広く取られているのだ。つまり、音像自体が空間的で深みがある。ノッケの虫の音からして幽玄の世界のようで、例えば打楽器ひとつひとつの粒だち、立体感が素晴らしい。普通のステレオで聴いても音が浮遊する感覚があるけれど、マルチだと面白さが増幅される感じだ。

参加メンバーも、本作を最後にサンタナを離れるグレッグ・ローリー、ニール・ショーン、逆にここから加入するトム・コスター(kyd)やダグ・ランチ(b)、ミンゴ・ルイス(perc)らが交錯。サックスのハドリー・カリマン、ウッド・ベースのトム・ラトリー、トランペットのトム・ハレルに、カスタネットで参加のレニー・ホワイトなど、スペシャルなクレジットもある。とりわけ<Look Up>の躍動的なダグ・ランチのベース、<Song Of The Wind>で聴けるカルロスとニールのギターの絡みは聴き逃さずに。<Stone Flower>が意外にもアントニオ・カルロス・ジョビンのカヴァーであるように。ブラジルや中近東のテイストも。ラテンとロックの融合にジャズの要素が加わることで、サンタナが新たな地平へと踏み出した記念碑的アルバムだ。