kenny loggins alive

ケニー・ロギンスがファイナル・ツアー『THIS IS IT』の北米スケジュールを発表した。エリック・クラプトンあたりと同様、ライヴ活動からの引退ではなくて、大規模ツアーはもう演らない、というコトだと思うけど、やはり一抹の寂しさは拭えない。AOR系ソロ・シンガーでは極めて数が少ない、本当に素晴らしいライヴ・エンターテイメントを提供できる人だったから。AOR系アクトはレコーディングでは著名ミュージシャンを起用して緻密な作品を作るから、どうしてもライヴが弱くなる。実際 優れたライヴ・アルバムもほとんどないし。でもケニーは別次元。80年リリースのこの『ALIVE』なんて、ホント、AOR系シンガーのライヴ・アルバム最高峰の一枚だと思っている。

ケニーのソロ・アルバムとしては4枚目。AOR方面で一番人気の『HIGH ADVENTURE』(82年)の前作に当たる。ケニーに脂が乗ってきて、人気も上り調子。そしてバンドも最高潮。そういうタイミングをうまく捉えてのライヴ・レコーディングだった。リズム隊はジョージ・ホーキンスJr.(b)とトリス・インボーデン(ds/のちシカゴ加入)。彼らのコンビネーションの素晴らしさは、アチコチのレコーディング・セッションにセットで起用されたことでも分かる。それにジョージは歌える人で、<Whenever I Call You 'Friend'>のスティーヴィー・ニックス役でもうまく立ち回っていたり。ホーン・セクションの2人がロギンス&メッシーナ時代からの仲間というのも、バンドの一体感を醸し出していた。<Here There And Everywhere>のアコースティック・カヴァーとか、まさにこの時期ならでは。ニール・ラーセンやスティーヴ・ウッド(kyd)、ネイザン・イーストらが参加するのはこの後だけど、ハジケるようなバンドの勢いはこの頃の方が高かった。

ケニーの人気自体は、<Footloose>のヒットが出た80年代中盤がピーク。ただその頃にはヒット志向が強くなっていて、AOR的バランス感は今イチ。アリーナ・ロック目線なら、全然気にならないけれど。この辺り、ケニーに対してどういうイメージを抱いているかで印象が違うだろう。当然ながら、<Footloose>や<Danger Zone>でケニーを知った人は多いと思うし。でもロギンス&メッシーナ時代や、ソロ初期のケニーを知っていると、このライヴ盤の頃に一番愛着が湧く。かといって、ケニーが<Footloose>で急に売れセンに走ったか、というと、それは違っていて。この『ALIVE』でも<I'm Alright>のようなロックン・ロール・チューンを演っているワケだし。ただサントラからのビッグ・ヒット連発で、彼が道を踏み誤っていくのは間違いなく、オールド・ファンとしては「この頃はスレてなくて良かったなぁ…」なんて。

サンダーキャットからのラヴコールで再評価されたり、ロギンス&メッシーナのリユニオン・ツアーに出たりと、キャリア終盤になって少し盛り返している感があるけれど、近年のリリースはライヴや子供向けの企画盤ばかり。純然たるオリジナル・ソロ・アルバムからは、もう15年以上遠ざかっている。ココは日本への(最後の?)顔見せと、キャリア終盤にふさわしいアルバムを作って欲しいな。盟友マイケル・マクドナルドは、ドゥービーと一緒に日本へ来てくれることだし。