
デヴィッド・ボウイが衝撃的な死を遂げたのは2016年の年明け早々だったから、今年で丸7年。その間もいろいろ話題が途切れるコトはなく、ボックス・セットももはや乱発気味。相当熱心なファンでも追い掛けるのが大変そうで、それほどでもない自分は最初の3〜4セットで匙を投げた。今も各アルバムの50周年盤が続々出ているけれど、すべてスルー。そもそも自分の好きなボウイは、『YOUNG AMERICANS』からの約10年で、いわゆるジギー・スターダストだった頃のボウイは、あんまし趣味じゃないのヨ

この『TOY』というアルバムは、2000年に制作されながら、ずーっとお蔵入りしていた“伝説の未発表アルバム”。元々、キャリアの最初期である1964〜71年に書いた楽曲を、ゼロ年当時のお気に入りバンドでスタジオ・ライヴ的にセルフ・カヴァーする、というプランで制作。そのまま発売まで持っていくというサプライズ・リリースを考えていたが、当時契約していたヴァージンに発売を拒否られ、それが元で自分のレーベルISOを立ち上げるコトになる。
その『TOY』の幻の音源は、一部がその後のセッションで再利用されたり、シングルやCDのボーナス・トラックとして断片的にお目見えしていたが、2021年のボックス『BRILLIANT ADVENTIRE 1992-2001』 12枚組のうちの1枚としてついに初登場。昨年初めには、CD3枚組『TOY BOX』(オリジナル/オルタナティヴ・ミックス/アコースティック)もリリースされ、大きな注目を浴びた(全英5位)。でも“未発表アルバムをいきなり3ヴァージョン一緒に出されてもなぁ…”と躊躇。“どうせすぐに単体で出るだろう”とタカを括っていたら案の定、というワケである。でも実際に聴いてみたら、“あらら、もっと早く買っておくべきだったかな?” と(実際はサブスクで聴いてましたが…
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ボウイという人は、キャリアの節目に初期衝動に立ち返るコトがあって、ジギー期の切り替えにカヴァー集を出したり、『LET'S DANCE』の商業路線の区切りに4人組バンド:ティン・マシーンを始動している。このセルフ・リメイク集もまさにそれ。ライヴ・アルバム化されたグラストンベリー2000出演時のバンド、すなわちマーク・プラティ(g)、アール・スリック(g)、ゲイル・アン・ドロシー(b)、スターリン・キャンベル(ds)、マイク・ガーソン(pf)、ホリー・パーマー(perc,cho)、エム・グライナー(kyd,cho)でスタジオ入りしたのも、フェスとその後のツアーでこの編成に手応えと勢いを感じたからだろう。
ごく初期の曲なので、制作当時の楽曲に比べたら、ボウイらしい個性は薄いかもしれない。でも自分のようなグレー・ゾーンのファンには、アクがない分かえって馴染みやすいし、普通にイイ曲が揃っていると思える。65年にデイヴィー・ジョーンズ名義で発表した<You've Got A Habit Of Leaving>や、66年のシングル曲で00年前後のツアーでもセットリスト入りしていた<Can't Help Thinking About Me>なんて、まるで中期ビートルズみたいなハーモニーが聴けるし、アルバム『ZIGGY STARDUST〜』時のアウトテイクという<Shadow Man>は、ほとんどエルヴィス・コステロ<She>みたいな出来。アルバム全体として、トッド・ラングレンっぽいトコロもあるような。初期の隠れた楽曲を今(ゼロ年)のメソッドで再構築する、レーベルには届かなかったその狙いは、シッカリ成功していたと思うな。
制作時期としては『HOURS...』(99年)と『HEATHEN』(02年)の間に当たるが、そんな単純なコトではなく、この『TOY』があったからこそ『HEATHEN』と03年作『REALITY』の充実があった。コアなボウイ・ファンはもうとっくに聴いていると思うけど、グレー・ゾーンのファンは無理に50周年諸作を追い掛けるより、これ1枚を聴く方が価値のあるコトだと思える。
あ、そうそう、この頃ボウイのバンドにいたエム・グライナーは、近々ワールドワイド・デビューを果たしますので、乞うご期待。
その『TOY』の幻の音源は、一部がその後のセッションで再利用されたり、シングルやCDのボーナス・トラックとして断片的にお目見えしていたが、2021年のボックス『BRILLIANT ADVENTIRE 1992-2001』 12枚組のうちの1枚としてついに初登場。昨年初めには、CD3枚組『TOY BOX』(オリジナル/オルタナティヴ・ミックス/アコースティック)もリリースされ、大きな注目を浴びた(全英5位)。でも“未発表アルバムをいきなり3ヴァージョン一緒に出されてもなぁ…”と躊躇。“どうせすぐに単体で出るだろう”とタカを括っていたら案の定、というワケである。でも実際に聴いてみたら、“あらら、もっと早く買っておくべきだったかな?” と(実際はサブスクで聴いてましたが…

ボウイという人は、キャリアの節目に初期衝動に立ち返るコトがあって、ジギー期の切り替えにカヴァー集を出したり、『LET'S DANCE』の商業路線の区切りに4人組バンド:ティン・マシーンを始動している。このセルフ・リメイク集もまさにそれ。ライヴ・アルバム化されたグラストンベリー2000出演時のバンド、すなわちマーク・プラティ(g)、アール・スリック(g)、ゲイル・アン・ドロシー(b)、スターリン・キャンベル(ds)、マイク・ガーソン(pf)、ホリー・パーマー(perc,cho)、エム・グライナー(kyd,cho)でスタジオ入りしたのも、フェスとその後のツアーでこの編成に手応えと勢いを感じたからだろう。
ごく初期の曲なので、制作当時の楽曲に比べたら、ボウイらしい個性は薄いかもしれない。でも自分のようなグレー・ゾーンのファンには、アクがない分かえって馴染みやすいし、普通にイイ曲が揃っていると思える。65年にデイヴィー・ジョーンズ名義で発表した<You've Got A Habit Of Leaving>や、66年のシングル曲で00年前後のツアーでもセットリスト入りしていた<Can't Help Thinking About Me>なんて、まるで中期ビートルズみたいなハーモニーが聴けるし、アルバム『ZIGGY STARDUST〜』時のアウトテイクという<Shadow Man>は、ほとんどエルヴィス・コステロ<She>みたいな出来。アルバム全体として、トッド・ラングレンっぽいトコロもあるような。初期の隠れた楽曲を今(ゼロ年)のメソッドで再構築する、レーベルには届かなかったその狙いは、シッカリ成功していたと思うな。
制作時期としては『HOURS...』(99年)と『HEATHEN』(02年)の間に当たるが、そんな単純なコトではなく、この『TOY』があったからこそ『HEATHEN』と03年作『REALITY』の充実があった。コアなボウイ・ファンはもうとっくに聴いていると思うけど、グレー・ゾーンのファンは無理に50周年諸作を追い掛けるより、これ1枚を聴く方が価値のあるコトだと思える。
あ、そうそう、この頃ボウイのバンドにいたエム・グライナーは、近々ワールドワイド・デビューを果たしますので、乞うご期待。