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ニューヨーク・パンクの代表格、テレヴィジョンのフロントマンだったトム・ヴァーレインが亡くなった。訃報を発表したのは、かつて付き合っていたパティ・スミスの娘であるジェシー・パリス・スミス。現地時間1月28日、近い友人に囲まれてニューヨークで穏やかに逝ったという。死因は発表されていないが、「短い闘病の末」と伝わっており、急病だったらしい。享年73歳。

個人的なコトを書くと、ロンドン・パンクの象徴的グループであるセックス・ピストルズやクラッシュ、ダムドあたりは、日本デビューと同時に聴いた。けれど、その粗野で衝動的なサウンドには、あまりのめり込めず。でもCBGBというクラブを拠点に始まったニューヨーク・パンク勢は、学生たちが中心になっていたためか、もっと知的でアートの香りが漂っていた。パティ・スミス、トーキング・ヘッズ、ブロンディ、ラモーンズあたりが代表格で、その最右翼がこのテレヴィジョン。ロンドン・パンク〜ニュー・ウェイヴには深入りしなかった自分も、ニューヨーク勢のトーキング・ヘッズとテレヴィジョンはシッカリ押さえていたな。

…とはいえ、正直それほど深く聴き込んだ覚えはない。それでも、04年に出た『MARQUEE MOON』(77年)の紙ジャケCDを超久しぶりに引っ張り出して聴いてみたら、曲はだいたい覚えていた。というコトは、友達に借りてカセットに録ったモノを、そこそこ繰り返し聴いていたんだろう。トムとリチャード・ロイドのギター・アンサンブルは、シンプルで無駄がなく、テンションが効いていて有機的に絡み合う。それが今も新鮮さを失わないのは、アンディ・ジョンズがプロデュース&録音で関わっていたからかな。グリン・ジョーンズの弟である彼は、早くからローリング・ストーンズやレッド・ツェッペリン、フリーらを手掛けていて、シンプルなバンドを上手く録る術に長けていた。

『MARQUEE MOON』はセールス的には成功しなかったものの、英国を中心に高く評価され、78年発表の2nd『ADVENTURE』は全英7位を記録。しかしバンドはそのまま解散し、トムはソロに転じていく。グループは92年に再結成。リチャード・ロイドがジミー・リップに交替したものの近年まで断続的に活動し、フジロックにも出演していた。自分とは少し距離があったけれど、オルタナ系音楽ファンには確実に爪痕を残した才人だった。

Rest in Peace...