kansas_50 years

カンサスの結成50周年を記念する3枚組ベスト。編集盤が多くて分かりにくいが、彼らは10年ごとに節目となるベスト盤やボックスを出している。でも今回はサスガに50周年。レーベルの枠を超えながら、デビュー・アルバムから最新作までを網羅したオール・タイム・ベストとなっている。しかもデビュー曲にして1stアルバムのオープニング・ナンバー<Can I Tell You>を現行メンバー6人でリレコし、このベスト盤のdisc-1冒頭に収めている。その情報とアートワークだけで往年のファンがワクワクしてしまう、そんな一大周年ベストだ。

この<Can I Tell You>ニュー・ヴァージョン以降は最新作から歴史を遡っていく並び。『THE ABSENCE OF PRESENCE』(20年)から『FREAKS OF NATURE』(95年)までの5枚のアルバムから、各2〜3曲づつのセレクトになっている。興味深いのは、カンサス代表曲である<The Wall>と<Dust In The Wind>が、ロンドン交響楽団との共演でセルフ・リメイクした『ALWAYS NEVER BE THE SAME』(98年)からチョイスされていること。ご新規ファンは「エッ」と思うかもしれないが、往年のファンだとオリジナルはもう耳タコなので、あえてコチラを、という意図が映る。日本では70年代のカンサスに人気が偏り気味だが、メンバー交代を経ながらも、今もかなり頑張っているのだ。

disc-2は『IN THE SPIRIT OF THINGS』(88年)から遡って『MONOLITH』(79年)までが対象。この80年代カンサスは、出入りを繰り返したスティーヴ・ウォルシュを筆頭に、ロビー・スタインハート、ケリー・リヴグレン、デイヴ・ホープと主要メンバーが次々離脱する反面、ジョン・エレファンテやスティーヴ・モーズなどの新しい才能が寄与した時期でもあった。初期プログレ路線からハード・ポップ指向を強め、多少の試行錯誤感も。そのためかこの50周年記念盤も、disc-2だけは米欧盤でセレクトが異なり、日本盤はEU盤に準じている。それが北米盤だと『IN THE SPIRIT OF THINGS』と『POWER』からは1曲もナシ。…というコトは、もしかしてMCA音源は、米国のみ権利上の問題があったのか? でもその分 EU/日本盤未収の人気曲<Fight Fire With Fire>(『DRASTIC MEASURE』所収)が入っていたりするから、どっちがイイか悩ましいところだ。

そしてdisc-3は、一番人気の初期ベスト。しかもいきなり78年発表の名ライヴ盤『TWO FOR THE SHOW(偉大なる聴衆へ)』 から、これまた名曲<Carry On Wayward Sun(伝承)>でスタートする。これには、往年のファンなら思わず熱くなること請け合い。ただし、何度もベスト盤に入ってきた代表曲中の代表曲が避けているキライがあり、選曲に対しては成否が割れそう。それでも、ブランクを挟みながらも50年もバンドが続いてきたのは、やっぱり大したモンだな。