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英国ブルー・アイド・ソウル・シンガーの代表格、ポール・キャラック最新盤。エースにスクイーズ、マイク+ザ・メカニクス、それにロキシー・ミュージックのサポートなども忘れられないけれど、やっぱり印象深いのはマイク+ザ・メカニクスとソロ活動。最近はエリック・クラプトンのバンドでもちょくちょく来日して、<How Long>あたりを披露してくれるけど、それじゃ〜かなり物足りない。

この『DON'T WAIT TOO LONG』は、ドイツの名門ビッグ・バンド:The SWR Big Bandとの共演によるスタンダード・カヴァー集。SWRというのはドイツの放送局で、そこが運営しているビッグ・バンド。日本で言えばN響みたいなもので、前身時代から数えると70年の歴史を持つ。常任のバンドマスターを持たず、英米独欧の著名ジャズ・ミュージシャンやアレンジャーを招聘するスタイルを取っていて、最近ではボブ・ミンツァー、ヘレン・シュナイダー、グレゴリー・ポーターなどと組んでいた。ポールとは05年発表のクリスマス企画で初共演。相性が良かったのか、それ以来ちょくちょく一緒にアルバムを作っている。今回のジョイントは、2020年の『ANOTHER SIDE OF PAUL CARRACK』以来。その内容は、ポップ・スタンダードからオリジナルまでをジャジーに歌ったモノ。しかし今回は、ジャズやブルース系が中心に置かれている。

普通スタンダードというと、1940〜60年代モノが中心という気がするが、今作のレパートリーは1920年代に書かれ、エラ・フィッツジェラルド、ベニー・グッドマン、カウント・ベイシー、ダイナ・ショアなどが歌い継いできた<I'll Always Be in Love with You(変らぬ愛を)>で始まり、各年代をバランス良く。B.B.キング<Cryin' Won't Help You>、ソロモン・バーク<Got To Get You Off My Mind>、サム・クック<Bring It On Home To Me>などを挟みつつ、最新はゼロ年代のマデリン・ペルー<Don't Wait Too Long>、ボビー・ブランド<The Only Thing Missing Is You>まで。

もう70歳越えというのに、ポールの歌声は衰えなく、スタンダード集ゆえに味わいも一層深くて。ただ個人的な好みとしては、直近の21年作『ONE ON ONE』のようなオリジナル作品に、より強く惹かれてしまう。一応 国内リリースもあるけれど、それよりもクラプトン・バンドじゃなく、単独で来日ライヴを開いて欲しいもの。同じくクラプトンをサポートしていたアンディ・フェアウェザー・ロウが何度もジャパン・ツアーをやっているのだから、それよりずっと集客できると思うんだけどな。コレ、アルバムが出るごとに言ってます