mayumi itsuwa_today

五輪真弓デビュー50周年記念企画で、70年代作品群がデジタル・リマスターにより3ヶ月連続リリース。今月はその第2弾で、77年作『えとらんぜ』と『蒼空』、78年作『残り火』、79年作『岐路』と、4枚のスタジオ・アルバムが復刻された。この時期はフランスに招かれて仏語アルバムを現地リリース。その日本仕様盤と言えるのが『えとらんぜ』。続く『蒼空( TODAY)』は、再びのL.A.録音。<さよならだけは言わないで>がヒットした『残り火』では歌謡曲への接近が見られ、そのまま『岐路』に立つ。かの<恋人よ>のブレイクは、翌80年のコトだ。ココではその4作から、『蒼空』をピックアップする。

2004年に発行した拙監修の最初の和モノ・ディスクガイド『Light Mellow 和モノ 669』に掲載している『蒼空』は、フォーク系シンガー・ソングライター的佇まいから徐々に洗練を深めていく五輪の70年代作品群中、最もシティポップ寄りのライトメロウ作品。久々のL.A.レコーディングということで、ドラムスにハーヴィー・メイソン/ジム・ケルトナー/ジョン・グェラン、ベースにウィルトン・フェルダー、キーボードがパトリース・ラッシェン/グレッグ・フィリンゲインズ/ジェイ・ワインディング、そしてギターにはラリー・カールトン/リー・リトナー/フレッド・タケットの揃い踏みとなる。サックスにもアーニー・ワッツ/ドン・マイリックが参加し、当時としては超一級ラインナップを揃えた。前回のL.A.録音に参加したキャロル・キングが不在なのは残念だが、まぁそこまで望んではバチが当たる、というものか。サウンド・アレンジはデヴィッド・キャンベル。

ちょっと陰りのある楽曲が多い人だが、このアルバムには<ミスター・ハッピネス>なんて曲があるくらいで、いつになく明るいムード。それがシティポップス感を高めている。スターター<東京>は、パリ・レコーディングを経験して何処か吹っ切れたような表情で歌っているし、軽やかなポップ・チューン<通り過ぎた日々>や、ウィルトンの重量感のあるベースが効いているファンク・ナンバー<ゲーム>も聴きモノ。曲ごとの詳細クレジットはないものの、このシャープなギターはラリーだろう。ウッド・ベースが効果を上げるジャジーな<星のきらめく夜は>も、なかなか味わい深く。

個人的には、このままシティポップ寄りのシンガー・ソングライター・テイストを続けて欲しかったが、程なくして岐路に立った彼女は、フランスで掴んだ歌唄いの道を選び、成功を掴んでいく。それはそれで良かったけれど、自分にとっての五輪真弓はココまで、なのだな。

さて来月は、定評のあった70年代のライヴ・アルバム3枚がリイシュー。大村憲司・村上“ポンタ”秀一・高水健司から成るエントランスを従えての『冬ざれた街』、ラリー・カールトンやクレイグ・ダーギーを日本に招いてライヴ録音した『本当のことを言えば』、影響を受けた洋楽カヴァーと自身の初期代表曲で構成した『The SHOW - best concert album ’75』と、どれも買い逃し厳禁ヨ。