impressions_preacher man

あるライナーの執筆がらみで、久々にインプレッションズ。ただしカーティス・メイフィールドは抜けた後が作品で、後釜のリロイ・ハトソンも既に独立。故にこの『PREACHER MAN』(73年)は、グループ初期からのメンバーであるサム・グッデンとフレッド・キャッシュの2人だけがメンバーとしてクレジットされている。ただしカーティスはサポート参加。…とはいえ、前作『TIMES HAVE CHANGED』みたいにプロデュースや楽曲提供を行なっているワケではなく、右腕のリチャード・トュフォがイニシアチヴを握っているのが特徴だ。

インプレッションズと言うと、<Gypsy Woman><People Get Ready><It's All Right><I'm So Proud><Keep On Pushing><We're A Winner>といったソウル・クラシックがすぐに思い浮かぶが、同時に早くから社会派メッセージを発してきたグループだった。しかしヴォーカル・グループと言うフォーマットでは限界があり、牽引役のカーティスが脱退。リロイ・ハトソンをシンガーに迎えて作ったのが、前作『TIMES HAVE CHANGED』だった。

マーヴィン・ゲイ『WHAT'S GOIN' ON』の影響が大きかったのだろう、もうこの頃にはR&Bシーンはニュー・ソウルの流れが決定的になっていて、カーティスが抜けたインプレッションズも、その流れに従うほか手がなかった。まさにグループ変革期の作である。それなのに、リロイ・ハトソンが抜けて後任も決まらないうちに急ぎアルバムを作ったのは、契約の関係か、もしくはスケジュール的なものなのか。理由は分からぬが、結果的にトュフォ色が濃くなるという興味深い一枚になった。

ただ、スタイルはまるでカーティス。オープニングにカーティス御用達のパーカッション奏者ヘンリー・ギブソンが活躍するするラテンなインストを置いたのは、さすがアレンジャーらしい試みとしても、曲調はそのままカーティスだし、タイトル曲もまた然り。グループの歩みだけを追っていると、ずいぶんニュー・ソウルに接近したと思えるけれど、チョッと まんま過ぎませんか?と。やっぱりアレンジがメインのトュフォは実務派で、カーティスが大きなディレクションを担っていたか。ヴォーカル・ハーモニーが厚いのは、いかにもインプレッションズだけれど。

でも、時々無性にカーティスが聴きたくなるカーティス信者としては、これはこれで安心して聴ける。それに愛着があるのも事実なんですぅ…