mie to 未唯

3月1日は未唯mieの日 毎年恒例ライヴが開かれているが、今年は『MIE to 未唯mie 1981-2023 ALL TIME BEST』のリリース日でもあり、そのまま中身はリリース・ライヴと相成った。CD2枚に収められたのも、名前にちなんでの31(ミイ)曲。ピンク・レディー解散後のソロ・キャリア集大成で、レコード会社の枠組みを飛び越え、ちょっとレアな企画曲までを彼女自身のチョイスで収録している。そこに新録曲となる<Hallelujah《ハレルヤ》>を、名匠:井上鑑のプロデュース&アレンジ追加収録。デュオ時代の“歌って踊る”イメージをかなぐり捨て、“世俗的賛美歌”とも賞賛されているレナード・コーエンの崇高な難曲に挑んでいるのだ。

そうしたソロ活動のマイルストーンたるオールタイム・ベストのリリース・ライヴだから、当然セットリストもそこからのナンバーで。…とはいえ、昔の曲をそのまま演るのではなく、ライヴ自体も井上鑑プロデュース&アレンジで、現在進行形の未唯mieを体感できるカタチにリニューアルされている。サポート・バンドは、kydの鑑さん以下、土方隆行(g) バカボン鈴木(b) 大滝裕子(cho)という常連陣に、山本真央樹(ds) 前田サラ(sax)土方理久音(g)が初参加組として。親子ほどの世代をミックスした実力派ミュージシャンが集い(実際バンド内に実の親子、二世ミュージシャンも)、一丸となって未唯mieライヴを盛り上げた。2本のギターを生かしてツイン・リードをカマしたり、カッティングでアンサンブルを構築したかと思えば、サラ嬢のアクレッシヴなブロウをたっぷりフィーチャーしたり。真央樹クンのシュアなドラムも、今様のアレンジにフィットしていた。

この日の未唯mieは、ブラックのシックなスーツで登場。一見フォーマルっぽくて、「アレ!? 意外におとなしい…」と思ったが、襟のラインとかは結構シャープ。案の定ジャケットを脱ぐと、下には若干のラメをあしらった白袖のインナーで、ちょっとしたイメージ・チェンジを。荒波を経てきた彼女の二面的キャリアをコントラストで表現しているように映った。

幕開けの<ブラームスはロックがお好き>ではブリッジにブラームスのフレーズを交え、<Never>ではダイナミックな歌いっぷりに耳を奪われ、そしてサンリオ曲<キティとダンス!>はカッコ良い都市型ファンクに変身。ポップな<Eternal Gift>は、時節柄バート・バカラックへの意識が覗く。その後はスロウ・チューンをいくつか続け、壮大な組曲風アレンジの<aubade〜夜明けの詩>へ。そこから<Hallelujah《ハレルヤ》>に繋いで本編ラストとするあたり、やはり『me ing』(07年)以降が今の未唯mieなんだと実感する。この<Hallelujah《ハレルヤ》>で彼女は、最近練習を重ねていると言うアコースティック・ギターを手にマイクに向かい、言葉を噛みしめるようにパフォーマンス。さざ波が打ち寄せてくるように、ジワジワと心を動かされた。そしてラストはアンコール定番<ALRIGHT ALRIGHT>を、ややコンパクトに。耳馴染みある楽曲が多いショウだったことも手伝って、まさにアッと言う間に駆け抜けたステージだった。

来月に大阪公演が控えているので、セットリストは貼らないでおくが、今の未唯mieを体験するには絶好のライヴ。

なお、ココロ躍る大人の音楽メディアを標榜する Re:minder でも、3回連続で未唯mie の記事をアップしています。https://reminder.top/740903548/