
ベストセラーのディスクガイド『「シティポップの基本」がこの100枚でわかる!』(星海社新書)の著者で、旅と音楽の文筆家・選曲家の栗本斉クン選曲・監修の2枚組コンピレーション『シティポップ・ストーリー CITY POP STORY 〜 Urban & Ocean』を、ご本人から送って頂いた。彼はもともと、拙監修『Light Mellow 和モノ』(04年)シリーズの執筆陣 Light Mellow Attendants の中心人物のひとりで、20年以上前からシティポップ拡散で手を携えてきた同志、みたいなヒト。海外からの逆輸入で一気にブーム化したシティポップだけれど、一方で拡大解釈も甚だしく、違和感を持つことも多い。だからこそ、こういうタイミングで、こういうベーシックなガイド本が出て、それを具現化したコンピが組まれる、というのは重要なコトだ。
《収録内容》
DISC 1 - Urban Side
1. LIGHT'N UP/吉田美奈子(1982)
2. FANTASY/中原めいこ(1982)
3. 土曜の夜はパラダイス/EPO(1983)
4. サブタレニアン二人ぼっち/佐藤奈々子(1977)
5. クリスタル・シティー/大橋純子&美乃家セントラル・ステイション(1977)
6. 中央フリーウェイ/ハイ・ファイ・セット(1977)
7. 真夜中のドア〜Stay With Me/松原みき(1980)
8. RIVER'S ISLAND/杉山清貴&オメガトライブ(1984)
9. Just a Joke/国分友里恵(1983)
10. バイブレイション/笠井紀美子(1977)
11. レオニズの彼方に/滝沢洋一(1978)
12. 街のドルフィン/濱田金吾(1982)
13. Dream In The Street/池田典代(1980)
14. City Lights by the Moonlight/惣領智子(1977)
15. 小さな宇宙/上田正樹(1978)
16. HOLD ME TIGHT/ラジ(1977)
17. BABY BLUE/伊藤銀次(1982)
18. スクールベルを鳴らせ!/杉 真理(1983)
DISC 2 - Ocean Side
1. 夏に恋する女たち/大貫妙子(1983)
2. プールサイド/南 佳孝(1978)
3. 雨のウェンズデイ/大滝詠一(1981)
4. Summer Blue/ブレッド&バター(1979)
5. Last Summer Whisper/杏里(1983)
6. YOU'RE MY BABY/佐藤 博(1982)
7. Gardenia/加藤和彦(1978)
8. LADY PINK PANTHER/鈴木 茂(1976)
9. Sea Side Story/伊勢正三(1981)
10. セイシェルの夕陽/松田聖子(1983)
11. Still I'm In Love With You (from『SEA BREEZE 2016』)/角松敏生(2016)
12. 夏のクラクション/稲垣潤一(1983)
13. Lusia/黒住憲五(1982)
14. 入江にて/郷ひろみ(1979)
15. Icebox & Movie/二名敦子(1985)
16. Midnight Pretenders/亜蘭知子(1983)
17. 裸足のままで/須藤 薫(1983)
18. グッドバイ・サマーブリーズ/竹内まりや(1978)
以上、レーベル枠を超越した、納得の全36曲。もちろん個々にピンポイントでは、アレが入ってない、コレが入ってない、というのはあるだろう。でも超王道に、少し脇道的な楽曲を添えるバランス感もイイ案配で。笠井紀美子、上田正樹、伊勢正三、郷ひろみあたりは、名前だけのパブリック・イメージ的判断だと、「これってシティポップなの?」という気になるだろう。でもそれは聴けば分かる。お好きな方ならとうに承知していることだけど、入門者・初級者に対してシティポップの面白さ、奥深さを知らしめるには、絶対必要なコトなのだ。
ゼロ年代初頭、洋楽AORが注目された時も、各メーカーからLight Mellow冠のコンピをアチコチから出してくれてひと通り落ち着いた後、『MELODIES』というド定番の集大成2枚組が出て成功した。今回もそれとほとんど同じようなパターン。和モノのディスクガイドにしても、コンピレーションにしても、ブームも何もない凪の状態にさざ波を立てようとするなら、従来ファンやフリークが注目してくれそうなモノを組まねばならない。当然レア物が多めに入る。でもそれいうアイテムが複数出て、周囲が熱量を増してきたタイミングで、一気に裾野を広げるような王道モノを出すと、大きなネクスト・ステップに繋がる。シティポップでは、それが栗本クンの『「シティポップの基本」がこの100枚でわかる!』と『シティポップ・ストーリー CITY POP STORY 〜 Urban & Ocean』、というワケだ。
Urban SideとOcean Sideに振り分けたアイディアも的確。現行の再評価ブームでは、70'Sと80'Sのサウンド面で色分けする傾向があるが、元来広義のシティポップには、東京人の作るシティポップと、地方から東京へ出て来た人が作る目線の異なったシティポップがあったワケで、それはもう はっぴいえんどの中に同居していた。これが徐々に商業ベースに乗って、CMタイアップなどが増えてくると、リゾート的なイメージに発展。その大きな契機が、『A LONG VACATION』や『FOR YOU』あたりだ。自分は以前から、シティポップとは、都市と、都市に戻ることを前提にしたプチ・リゾートのポップスだと言っていた。ユーミンや南佳孝、鈴木茂などは、早くからそれを作品にしていたし。だからそれをこのように無理なくナチュラルにテイスト別にコンパイルするのは正しいと思うし、そこに理屈や御託は不要だろう。
シティポップの世界的再評価が、海外DJによるクラブ・ムーヴメントから火がついたのは紛れもない事実。だから世代や立場によって、主張が違うのは当然のこと。でもだからと言って、若手のクラブ目線にバイアスを掛けるのは違うし、その距離感を認識した上で、自分のセンスがどちらに近いかを知っていれば良いのだ。当のNight Tempo君でさえ、最近シティポップと呼ばれることを嫌っているようで、昭和グルーヴという看板を使っている。実際クレバーな彼は、かなり早い段階から、従来の70'sシティポップのファンとの違いを認識していた。おそらく最初は、シティポップと呼ばれるなら、その便利な看板を利用しちゃえ、ぐらいの感覚だったのではないか。だが予想以上の巨大ブームになり、進みすぎた拡大解釈に危機感を覚えて、そういうスタンスを取るようになったのだと推察している。
こうした状況だからこそ、肥大化したブームの渦中に、シッカリとセンターラインを引くことが重要。その辺り、ウェブで読める大人の音楽誌OTONANO最新号に掲載のクニモンド瀧口とのコンピ対談の中でも語られているので、併せてチェックすべし、です。
https://otonanoweb.jp (要・無料登録)
DISC 1 - Urban Side
1. LIGHT'N UP/吉田美奈子(1982)
2. FANTASY/中原めいこ(1982)
3. 土曜の夜はパラダイス/EPO(1983)
4. サブタレニアン二人ぼっち/佐藤奈々子(1977)
5. クリスタル・シティー/大橋純子&美乃家セントラル・ステイション(1977)
6. 中央フリーウェイ/ハイ・ファイ・セット(1977)
7. 真夜中のドア〜Stay With Me/松原みき(1980)
8. RIVER'S ISLAND/杉山清貴&オメガトライブ(1984)
9. Just a Joke/国分友里恵(1983)
10. バイブレイション/笠井紀美子(1977)
11. レオニズの彼方に/滝沢洋一(1978)
12. 街のドルフィン/濱田金吾(1982)
13. Dream In The Street/池田典代(1980)
14. City Lights by the Moonlight/惣領智子(1977)
15. 小さな宇宙/上田正樹(1978)
16. HOLD ME TIGHT/ラジ(1977)
17. BABY BLUE/伊藤銀次(1982)
18. スクールベルを鳴らせ!/杉 真理(1983)
DISC 2 - Ocean Side
1. 夏に恋する女たち/大貫妙子(1983)
2. プールサイド/南 佳孝(1978)
3. 雨のウェンズデイ/大滝詠一(1981)
4. Summer Blue/ブレッド&バター(1979)
5. Last Summer Whisper/杏里(1983)
6. YOU'RE MY BABY/佐藤 博(1982)
7. Gardenia/加藤和彦(1978)
8. LADY PINK PANTHER/鈴木 茂(1976)
9. Sea Side Story/伊勢正三(1981)
10. セイシェルの夕陽/松田聖子(1983)
11. Still I'm In Love With You (from『SEA BREEZE 2016』)/角松敏生(2016)
12. 夏のクラクション/稲垣潤一(1983)
13. Lusia/黒住憲五(1982)
14. 入江にて/郷ひろみ(1979)
15. Icebox & Movie/二名敦子(1985)
16. Midnight Pretenders/亜蘭知子(1983)
17. 裸足のままで/須藤 薫(1983)
18. グッドバイ・サマーブリーズ/竹内まりや(1978)
以上、レーベル枠を超越した、納得の全36曲。もちろん個々にピンポイントでは、アレが入ってない、コレが入ってない、というのはあるだろう。でも超王道に、少し脇道的な楽曲を添えるバランス感もイイ案配で。笠井紀美子、上田正樹、伊勢正三、郷ひろみあたりは、名前だけのパブリック・イメージ的判断だと、「これってシティポップなの?」という気になるだろう。でもそれは聴けば分かる。お好きな方ならとうに承知していることだけど、入門者・初級者に対してシティポップの面白さ、奥深さを知らしめるには、絶対必要なコトなのだ。
ゼロ年代初頭、洋楽AORが注目された時も、各メーカーからLight Mellow冠のコンピをアチコチから出してくれてひと通り落ち着いた後、『MELODIES』というド定番の集大成2枚組が出て成功した。今回もそれとほとんど同じようなパターン。和モノのディスクガイドにしても、コンピレーションにしても、ブームも何もない凪の状態にさざ波を立てようとするなら、従来ファンやフリークが注目してくれそうなモノを組まねばならない。当然レア物が多めに入る。でもそれいうアイテムが複数出て、周囲が熱量を増してきたタイミングで、一気に裾野を広げるような王道モノを出すと、大きなネクスト・ステップに繋がる。シティポップでは、それが栗本クンの『「シティポップの基本」がこの100枚でわかる!』と『シティポップ・ストーリー CITY POP STORY 〜 Urban & Ocean』、というワケだ。
Urban SideとOcean Sideに振り分けたアイディアも的確。現行の再評価ブームでは、70'Sと80'Sのサウンド面で色分けする傾向があるが、元来広義のシティポップには、東京人の作るシティポップと、地方から東京へ出て来た人が作る目線の異なったシティポップがあったワケで、それはもう はっぴいえんどの中に同居していた。これが徐々に商業ベースに乗って、CMタイアップなどが増えてくると、リゾート的なイメージに発展。その大きな契機が、『A LONG VACATION』や『FOR YOU』あたりだ。自分は以前から、シティポップとは、都市と、都市に戻ることを前提にしたプチ・リゾートのポップスだと言っていた。ユーミンや南佳孝、鈴木茂などは、早くからそれを作品にしていたし。だからそれをこのように無理なくナチュラルにテイスト別にコンパイルするのは正しいと思うし、そこに理屈や御託は不要だろう。
シティポップの世界的再評価が、海外DJによるクラブ・ムーヴメントから火がついたのは紛れもない事実。だから世代や立場によって、主張が違うのは当然のこと。でもだからと言って、若手のクラブ目線にバイアスを掛けるのは違うし、その距離感を認識した上で、自分のセンスがどちらに近いかを知っていれば良いのだ。当のNight Tempo君でさえ、最近シティポップと呼ばれることを嫌っているようで、昭和グルーヴという看板を使っている。実際クレバーな彼は、かなり早い段階から、従来の70'sシティポップのファンとの違いを認識していた。おそらく最初は、シティポップと呼ばれるなら、その便利な看板を利用しちゃえ、ぐらいの感覚だったのではないか。だが予想以上の巨大ブームになり、進みすぎた拡大解釈に危機感を覚えて、そういうスタンスを取るようになったのだと推察している。
こうした状況だからこそ、肥大化したブームの渦中に、シッカリとセンターラインを引くことが重要。その辺り、ウェブで読める大人の音楽誌OTONANO最新号に掲載のクニモンド瀧口とのコンピ対談の中でも語られているので、併せてチェックすべし、です。
https://otonanoweb.jp (要・無料登録)