rie nakahara

ソニーミュージックAldelight City Pop Collectionからの再発で、シングル6曲と山下達郎が提供した5曲を集めた82年のベスト盤をそのまま初CD化。アナログ盤では、A面に松本隆/筒美京平チームによる代表曲<東京ららばい>や<ディスコ・レディー>など、キャリア前半のシングル6曲を収録。B面に山下達郎提供の5曲を集約していた。

でもこの復刻、ハッキリ言って、ちょいとビミョ〜。何処ぞみたいに人手を惜しんだ手抜き仕事でも、廉価シリーズならまだ諦めがつくけれど、これで2000円台のミッド・プライスってどうよ? しかもシングル6曲は全部『GOLDEN☆BEST』に入っているので、ありがたみが薄い。彼女が歌った達郎ナンバーが一度にまとめて聴けるのは価値が高いが、オリジナル・アルバムでも2枚に分散しているだけなので、ならばそれをそのままリイシューしてくれた方が…、というのが自分の意見。確か『Touch Me』は通販ボックスでしかCDになっていなかったのでは? オリジナル復刻なら、一緒に入っていた鈴木茂、小林泉美、清水靖晃の提供曲だって聴けるし。

ちなみに達郎氏提供曲は以下の5曲。
・ドリーミング ラブ/作詞:吉田美奈子 作曲・編曲:山下達郎 from Killing Me(79年)
・個室/作詞:吉田美奈子 作曲・編曲:山下達郎  from Killing Me(79年)
・朝まで一緒に/作詞:中原理恵 作曲:山下達郎 編曲:山下達郎、坂本龍一 from Touch Me(78年)
・ヒーローはあなた/作詞:吉田美奈子 作曲:山下達郎 編曲:坂本龍一 from Touch Me(78年)
・明日にはグッドバイ/作詞:吉田美奈子 作曲・編曲:山下達郎 from Touch Me(78年)

『Killing Me』には参加メンバーの記載が見当たらないが、『Touch Me』は村上ポンタ秀一・岡沢章・坂本龍一・松木恒秀という『IT'S A POPPIN' TIME』と同じリズム隊に、浜口茂外也(per)、村岡建(sax)という陣容。ベスト盤『DREAMING LOVE』には、当然ながら一切のクレジットはない。

単純に言えば、歌謡曲とシティポップが融合したベスト盤、というのがコレの売りだけど、それが今のシティポップ・ブームとは噛み合ってない。だってシティポップ再評価の意味は、DJ目線によるダンス・サウンドとして、という以上に、当時の音楽を懐メロではなく今の音として広める、というのが一番重要なトコロでしょ? 例えば、寺尾聰なら<ルビーの指環>ではなく、今なら<Shadow City>というように。それがココでは、<ルビーの指環>オマージュの歌謡チューンが入っていたり、バリバリのテクノがあったりして、どうしても古臭く感じてしまう。それなら『GOLDEN☆BEST』で充分なワケで。達郎曲をアピールするために敢えてベストを再発するなら、体裁はそのままでも、中の旧A面はシティポップ系の他の曲に入れ替えちゃう、ぐらいの英断が欲しかったな。