ernie story

レア・グルーヴ系のファンは、「エ、これ出るの?」と驚いているかな? プライベート・プレスのため激レア状態が続いていたアーニー・ストーリーの77年ワン&オンリー作が、CDとアナログで世界初リイシュー。ごく一部のコレクターには、AOR meets MODERN SOUL のグルーヴ・アイテムとして知られていた隠れ人気アイテムで、目に鮮やかなライト・ブルーのアートワークが印象的だ。

その手書きのアートワークといい、“瞑想”を謳ったタイトルといい、何処かスピリチュアルなテイストが漂うこのアルバム。収録曲には<The Gospel In E. Minor>なる楽曲も収録されている。それでも、いわゆるゴスペル・アルバムではないらしく…。ま、自主制作でプレス枚数なんて100〜200枚程度だろうから、当時は教会で手売りされるのが流通経路だったゴスペル物より、もっとプライヴェート感が強かったのかもしれない。

プロフィールもほとんど分からない人だが、この時点でインプレッションズ、カーティス・メイフィールド、チャイ・ライツ、ロネッツなどに楽曲提供していたらしく、実際にインプレッションズ『PREACHER MAN』(73年)には<Simple Message>という曲が入っている。でもこの並びから、どうやらシカゴのミュージック・シーンに縁深かった人という想像ができる。

でもこのアルバムは、実はミネアポリスのASIスタジオ録音。このスタジオは、デビュー直前のプリンス(当時17〜18歳)がゲスト参加した地元ファンク・バンド、ザ・ルイス・コネクションが使っていた。そう言われると、プリンスのデビュー作『FOR YOU』(78年)と空気感が近いかも。もちろんアチラはメジャー・レーベルによる一人多重のマルチプレイのL.A.録音だけど、そのミニマムな感覚が共通している。

それでも全体的には、アーリー70's のシカゴ〜ノーザン・ソウル・フレイヴァーが濃厚。ブルージーに始まるタイトル曲<Meditation Blue>も、途中からビート・アップしてダニー・ハサウェイ<The Ghetto>みたいになるし、アナログ盤A面後半はシームレスに繋がって、マーヴィン・ゲイ『WHAT'S GOING ON』からの影響を感じさせる。インプレッションズ〜チャイ・ライツ路線を意識しながらも、決してディープな方向には行かず、如何にもブルー・アイドなシンガー・ソングライター作品らしい涼やかさ。<The E Groove>のように、ジャジーなインストゥルメンタル楽曲もある。参加メンバーにはジャズの心得があるようで、無名ながら一様に演奏スキルが高い。おそらくこのアルバムも一発録りが基本で、ダビングは必要最低限じゃないかと思われる。

そんな中でアーニーは12弦ギターを弾くだけで、作編曲とヘタウマなヴォーカルに専念している。それでもアレンジやコード・ヴォイシングに多くの工夫があって。低予算制作で音数は少ないものの、使った音は最大限に生かす。そういう手管は、立派にメジャー・クラスと言っていい。なおCDは本日発売で拙ライナー。アナログは7月まで少々お待ちを。