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99年作『TEMPERAMENTAL』以来、24年ぶりにエヴリシング・バット・ザ・ガール(EBTG)がニュー・アルバムをリリースした。通算11枚目となる『FUSE』がそれである。ところがコレ、日本盤は出る気配がない。原盤はベン・ワットのBuzzin' Fly、ディストリビュートが古巣のヴァージン/ヴァーヴなので、普通はユニバーサルから出るはずだが、もしかして「売れない」と見限られたか? サブスクリプションが優位に立つ米国では、遂にCDの売り上げがレコードに追い越されたそうである。海外メジャー・レーベルの中には、「日本はいつまでCDを売ってるんだ?」と本部からプレッシャーをかけられている所もあるとか。ガラパゴスと言われる日本でCDが今も売れているのは、アイドル市場が圧倒的に強いから。純粋に音楽で勝負する洋楽は、もうサブスク or アナログに追い込まれていくのは必定なんだろう。それともEBTGの場合、日本は契約テリトリー外なのか? 

まぁ、そんな事情は脇に置いといて、この新作『FUSE』。ポスト・パンクの流れから誕生し、ちょっぴりジャズに寄ったネオアコから、オーケストラの導入、打ち込みの使用、名匠トミー・リピューマとの邂逅、アコースティック回帰、そして一転ドラムン・ベースへと、めまぐるしく指向性を変えてきた2人だ。それゆえ21年春から制作を始めたという新作には、相応の不安もつきまとったが。

トレイシー・ソーンの発言では、「あらかじめ方向性を決めないで、思いつきを受け入れる、オープンマインドな遊び心の精神で始めた」そう。ベンもそれに応じて、「自然なダイナミズムが生まれたんだ。私たちは短い言葉を交わし、少しだけ顔を見合わせ、本能的に一緒に曲作りをした。それだけでEBTGになった」と語っている。

イヤ、実際、24年ぶりの作品とは思えない。『TEMPERAMENTAL』の2〜3年後、ゼロ年代初頭の作品だと言われても信じてしまいそうだ。それはPCやら最新テクノロジーに頼っていない証拠で、普遍的なEBTGらしさが厳然と存在していることを示している。さすがにトレイシーの歌声は、少しくぐもった感があるけれど、往年のファンならすぐに馴染んでしまうんではないかな?

とはいえ、やっぱり自分的に一番好きなのは、従来ファンの間で賛否を呼んだリピューマとの90年作『THE LANGUAGE OF LIFE』から動かないんですけど…。