tommy decarlo

今日の天気のように、爽快感溢れる好盤。実はサブスクで聴いて軽くブッ飛び、慌ててCDをポチった一枚だ。トミー・デカルロは、現行ボストンのリード・シンガー。イメージ的には、ボストンのヴォーカルと言えばブラッド・デルプ、なのは言うまでもない。でも敢えて言ってしまうと、ボストンが辛うじてボストンらしさを保っていたのは、94年の4作目『WALK ON』まで。既にデルプ脱退後で、リード・シンガーはエアプレイのトミー・ファンダーバークほか3人。それでもサウンド面では、トム・ショルツが何とか体裁を繕って、一定のクオリティを守っていたと思っている。

しかし02年作『CORPORATE AMERICA』はもうダメ。デルプ復帰はあったけれど、何もかもデキは良くなくて。衝撃的なデルプ自死(07年)を挟んだ13年作『LIFE, LOVE & HOPE』は、生前の録音曲などもフィーチャーして多少持ち直したものの、楽曲イマイチ、打ち込みもダサくて、往年のボストンには程遠く感じられた。それでも世間的な評判は悪くなく、翌14年には35年ぶり2度目の来日。日本武道館は大入りだったらしい。79年の初来日を観て、「うわぁ〜、レコードのまんまだァ〜」という妙な感想を持っていた自分は、トム・ショルツ以外は別モノになってしまったボストンにガッカリし、当時の記憶を壊したくなくて、2度目はスルー。観に行った知り合いが「トムがいるコピー・バンド」と評していて、複雑な気持ちになったのを思い出す。

で、このトミー・デカルロ。現行ボストンが “トム・ショルツ率いるコピー・バンド” だとしたら、このアルバムは、今やボストンはトム・ショルツ抜きでも成立する、というコトになるか。スコーンと抜けのいいサウンドに緻密なギター・アンサンブル、そして伸びやかなハイトーン・ヴォーカルとハーモニー。新しいコトなんか何も演っちゃいないけれど、そのすべてがイイ時期のボストンに通じていて、爽快で快感カイカ〜ン 収録曲は、プロデューサーでもあるアレッサンドロ・デル・ベッキオと2人のギタリストが書いていて、どれもなかなか。飛び抜けたキラー・チューンはないし、同じようなタイプの曲が揃えられていて、若干一本調子のキライはある。それでもどの曲も高レヴェルを守っていて破綻がなく、好印象を残すのだ。

実際トミーは3年前に、息子でギタリストのトミー・デカルロJr.とのプロジェクト:デカルロでアルバムを出していて、こちらには日本リリースもあった。けれど、ボストンを目指すも腰砕けに終わっていて。父親が書く曲に息子のギター、どちらも的が絞り切れておらず、中途半端に終わっていた。でも今作は敢えて父親のソロに特化し、ピントがシッカリ。しかもトミーSr.は歌うことだけに専念し、曲作りを含め、他はベッキオが一手に引き受けている。伊フロンティアーズの発信というと、メロディック・ハードに寄り過ぎるコトがままあるが、コレは見事にアメリカンナイズされたラジオ・フレンドリーなノリ。そのアリーナ・ロック的テイストに乗せられてしまうのだ。

でもやっぱり ボストンを狙うならこうでなくっちゃ …ってか、自分の中では、ゼロ年代以降のボストンは既に超えちゃってる 『CORPORATE AMERICA』や『LIFE, LOVE & HOPE』に感じてしまったご本家の煮え切らなさは、ココには微塵もないのだヨ。