yes_mirror to the sky

前作『THE QUEST』から1年7ヶ月ぶり、通算23作目となるイエスの新作。2015年に最後のオリジナル・メンバー:クリス・スクワイアーが亡くなったのに続き、クリスに次いで長く在籍していたアラン・ホワイトも昨年逝去。出戻りのスティーヴ・ハウがイニシアチヴを握るようになっての2作目になる。でもコレがかなりイイ。個人的には、90年代以降に発表した作品群で、一番シックリ来た。近年のイエスにしては短かいインターヴァルでのリリースなのも、2作連続で2枚組みたいなサイズ感なのも、今の彼らが乗っている証拠だろう。

それはおそらく、スティーヴ・ハウのリーダーシップの元で、新旧メンバーがガッツリまとまったから。旧メンバーといっても、スティーヴに次ぐ古株は、80年に参加して『DRAMA』に貢献し、11年から復帰したジェフ・ダウンズ。4代目シンガーのジョン・デイヴィソンが一番若いと言っても既に52歳で、スティーヴとは親子ほどに歳が離れている。その一方で、クリスやアランの後任となったビリー・シャーウッド(b)やジェイ・シェレン(ds)は、突然イエスに参加したワケではなく、おのおのサポートとしての参加期間があった。だからメンバー・チェンジといっても極めてスムーズな交代劇で、その歪みはまったく感じられない。

もちろんコロナ禍のリモート・レコーディングなので、相応の難しさはあったはず。でもそれぞれが自分の環境でジックリ録音できたのが、逆に功を奏したようだ。ただ現メンバーは、ダウンズが元バグルス〜エイジアで、鍵盤奏者ながらもポップス寄り。シャーウッドもデヴィッド・ペイチやスティーヴ・ポーカロがプロデュースしたロジック出身で、ワールド・トレイドのメンバーを務めたほか、ボビー・キンボール、イエス創設メンバー:トニー・ケイとのプロジェクト:YOSOを組んだりと、いわゆるアメリカン・ハード・プログレ系のヒトだ。そうした偏りを補強すべく、スティーヴの参謀として外部からイエスらしいクラシカルなサウンド作りに貢献したのがポール・K・ジョイス。80年代にセンスというシンセ・ポップ・グループでデビューした人で、実はイエスやジェネシスなどのプログレ・マニアらしい。ライナーによれば、イエス『危機』を聴いてミュージシャンを目指すようになったとか。近年は映像関係の作編曲が多いようだが、彼のオーケストラ・アレンジが実に効果的だ。とりわけ長尺タイトル曲のオーケストラ・パートなどは、サラウンドで聴くと迫力満点でビックリする。

こうして『DRAMA』に通じるイエスのモダン・ポップな部分と、黄金期イエスが持っていたクラシカルな構成美が、スティーヴのプロデュースで見事に融合。さすがに70〜80年代と比べると、楽曲自体が今イチ弱い気がしてしまうけれど、ディスク2の3曲はすべてスティーヴ単独作品で、ほとんどやりたい放題だ。考えてみれば、スティーヴがイエスを完全掌握できたのは、前作が初めて。その前向きな気持ちが、現行イエスを突き動かしているのは間違いないだろう。

なお本作の国内盤リリース形態は、CD2枚組の通常盤と、それを丸ごとBlu-rayに入れてドルビー・アトモスや5.1chサラウンドなど4種のフォーマットで聴かせる2CD+Blu-ray3枚組の2タイプ。リスニング環境のある方は、是非後者のゲットをオススメしたい。輸入盤では1枚モノと2LP+2CD+Blu-ray Artbookのデラックス盤、アナログ盤など各種ある。こりゃ〜今更ながらに気合入ってまんな

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