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最近お近づきになったサエキけんぞうさんからお誘いをいただき、サエキけんぞうのコアトーク 96『はっぴいえんどの原像・鈴木茂』@渋谷ロフト9へ。キュレーターは『はっぴいえんどの原像』を上梓されたサエキさんと篠原章さん。トーク・ゲストに当事者である鈴木茂さん。このイベントは毎回大幅に時間オーヴァーするらしく、ほぼ満席になった時点でスタート時間を少し前倒しして始まったが、案の定 終了予定の22時までに収まらずで、ほぼ3時間半の長丁場となった。

それでも無駄に長いワケはなく、はっぴいえんど当時の知られざる逸話が随所に。主なテーマは、

1,「12月の雨の日」はっぴいえんどの発進した日
「さあ、これに合わせてギターを引いてくれ」細野さんの部屋で
2,「ゆでめん」 複数の元ネタについて
3,「ゆでめん」と「風街ろまん」のミッシングリンクを埋める
4,「風街ろまん」の現場、様子
5,「はっぴいえんど3」アメリカ録音
6,1973-9-21ライブ キャラメルママのことも

自分のような仕事をしていると、ひとつの事象にまつわるいろいろな周辺事情を精査して、仮説や推論を立てることが多いけれど、当然ながら当事者の話に勝るモノはない。しかしコトは50年も前のコト。たとえ当人であっても、強い意志を持って動いたコトなら覚えていても、流れに乗っただけだとウロ覚えだったりするし、そもそもこちらの懸命の検証がまるで的外れだったりすることも。それだけに、複数の関係者から話を聞き出して事実を解き明かすことが重要だ。けんぞうさんは冒頭に、「僕たちは趣味でやってる」と力説していたけれど、その根底に愛情があるのは間違いなく、はっぴいえんどみたいな大きな存在になればなるほど、多くの愛情と探究心が集積されていく。

面白かったのは、高校生だった篠原氏が松本隆に宛てて書いたというファン・レターの公開。封緘したものの投函されずに50年残っていたソレを、この場で開封したのだ。元・大学教授が認めたそれは、見事な「ですます調」でありました。

また<はいからはくち>の出囃子は、一体誰が作ったのか?という話。この曲を作った大瀧詠一が首謀者なのは間違いないが、他のメンバーはどう絡んだのか? どうやら茂さんもコレを録っていたことはアルバム完成まで知らなかったみたいで、大瀧さん単独説が有力に。ただ、このよく転がるバチ捌きは本業じゃね?という話も出て、松本隆さんへの宿題になった。

また会場にいらしていたプロデューサー:三浦光紀氏(ベルウッドコード創設者)による発言も、大変興味深く。曰く、「はっぴいえんど解散のキッカケは大瀧さんのソロ・アルバム制作と言われているけど、そうじゃない。大瀧さんはソロを作るに当たって細野さんに相談し、ちゃんと了解を取っている。はっぴいえんどを解散させるつもりはなかったんだ」と。

そんなこんなで3時間半がアッと言う間。まことしやかに語られられていることも、立場を変えた視点では、違う側面が見えてきたり、裏の事実が顔を出す。愛情ゆえの深読みも面白いけど、やっぱり事実を解き明かして伝えていくコトは大事。歴史を語ることができる皆さんがご健在なうちに、後進がやるべきコトは山積している。

なお『はっぴいえんど(ゆでめん)』『風街ろまん』のカタログを持つインディ・レーベルの先駆けURCは、少し前にソニー・ミュージック傘下へ販売権が移動しており、来月から順次、高品質Blu-spec CD2仕様で再発がスタートする。この2枚も近々にラインナップされるはずだ。