michael thompson band 023

2010年代初頭までデヴィッド・フォスターのお抱えギタリストを務めていたL.A.の敏腕セッション・ギタリスト:マイケル・トンプソンのリーダー・バンド、マイケル・トンプソン・バンド(MTB)のニュー・アルバム。ソロ・アルバムを出したり、プロジェクト的グループでのリリースもあるが、ここ数年はイタリアのFrontierのサポートで、MTBを母船のようにしている模様。アルバムとしては2020年の『HIGH TIMES - LIVE IN ITALY』、スタジオ作品としては2019年『LOVE & BEYOND』以来4年ぶりになる。

今回の重要ポイントは、オリジナル・シンガーのリチャード・“ムーン”・カルフーンが復帰したこと。彼は89年のデビュー盤『HOW LONG』に参加していたが、当時はまさにマイケル・トンプソンの相方的存在で、実際はツー・メン・ユニット的様相を呈していた。しかしマイケルがセッションで忙しくなってしまったか、後続はなく、12年のバンド復活にも合流せずで…。それが今回デビュー盤以来久しぶりのコンビ復活。一番喜んだのはおそらくマイケル本人で、それはfeaturing Moon Calhoun瓩箸いΥ波弔砲睇修譴討い襦

…といっても、今となってはムーン・カルフーンに馴染みのない人も多いか。彼はなかなか激動の音楽キャリアを歩んできた人で、生まれはオクラホマ州タルサ。レオン・ラッセルやJ.J.ケイルなど、スワンプ系やブルー・アイド・ソウルのアーティストを数多く輩出したエリアである。ムーンもその例外ではなく、最初はレオン・ラッセルのセッションに参加していた。しかもヴォーカルではなく、ドラマーとして。そして、やはり同郷でレオンのサポートについていたギャップ・バンドでドラマーを務め(あのチャーリー・ウィルソンがいたR&B/ファンク・バンド)、その後L.A.でルーファス&チャカ・カーンに参加する。そう、ジョン・ロビンソンの前任が、このムーンだったのだ。この辺り、サンファイアのドラマー:レイモンド・カルフーンと混同されることが多くて、Discogsのデータも怪しいコトになっているのだけれど…。

ところがその後交通事故に遭い、脊椎だか腰椎だかを痛めてドラムを叩けない身体に。そのためヴォーカリストに転身。新たにザ・ストランドというバンドを結成し、リード・シンガーに収まった。このグループは80年に、珍しくジェフ・ポーカロのプロデュースでデビュー。だが内容はチョッと残念で、鳴かず飛ばずのままアルバム一枚で消えている。ムーンもその後しばらく表舞台に出てこなかったが、マイケル・トンプソンと出会って復活したのも束の間…、というワケだ。

そうした流れを経ての、この『THE LOVE GOES ON』。先のライヴ盤でもボストン<More Than A Feeling>のカヴァーを演っていたけど、狙いはまさに産業/アリーナ・ロックと呼ばれるスタイル。ムーン不在期は欧州寄りのメロディアス・ハード指向が強かったが、そこはムーン復帰が吉と出たよう。アートワークほどのメタリックな感じはしない。当然ながら相応に歳は喰っているので、力任せのシャウトなんかナイし、シッカリと歌メロを聴かせるタイプのヴォーカルである。PVを見たら車椅子姿なので、年齢を重ねて古傷を悪化させてしまったか?

でもマイケルの抑揚の効いたドラマチックなギター・ソロが存分に活きるのは、まさにこのスタイルだからこそ。マイケルとムーンの他にもう一人、トム・クルーシエというベース奏者が曲作りで貢献しているが、この人は RATTのフアン・クルーシエの弟だそうだ。そしてボーナス・トラックの、その名も<Wheelchair>という曲は、ムーンが一時 一緒にバンドを組もうとしていたジェフ・パリス(=元ピーセスのジェフリー・レイブ)が共作に名を連ねている。

まぁ、80年代のように、この手のバンドがチャートを賑わすようなコトはもうないだろう。でもその一方で、根強い人気を保っているグループだって少なくない。このアルバムもなかなか手堅く聴かせてくれるので、その手のファンなら聴いて損ナシ、ツアーとかは難しそうだけれど、せっかくオリジナルのコンビが復活したのだから、彼らにも一矢報いてほしいものだ。