
著しい拡大解釈に賛否が割れるようになっている、昨今のシティポップ・シーン。その是非はともかくとして、70, 80, 90年代の良質和製ポップス全般に再度スポットが当てられる傾向は、なかなか喜ばしいモノだ。そんな中、ビクターの恒例企画【マスターピース・コレクション】から『フィーメル・シティポップ名作選』シリーズ第2弾が登場。豊富なカタログ群からセレクトされたのは、女性アイドル&女優たちの作品を中心に、シティポップ色の濃いアルバムばかり、全13タイトル。どれも現在は入手不可能で、UHQCD による高音質・最新マスタリング仕様の生産限定復刻になっている。自分が解説を担当したのは、以下の3作だ。
● 阿川泰子『ECHOES +2』![]() | 美形ジャズ・シンガーとしてお馴染みの阿川泰子が、95年にロンドン制作した異色のロック・カヴァー集。タイトルのピンク・フロイド楽曲を始め、ブラインド・フェイス<Can't Find My Way Home>、ポリス<King of Pain>、スティーリー・ダン<Night By Night>、ポール・マッカートニー<Junk>、トッド・ラングレン<Can We Still Be Friends>、リトル・フィート<All That You Dream>、ロキシー・ミュージック<Same Old Scene>など11曲を斬新カヴァーし、英国産AOR的ニュアンスを湛えている。ピノ・パラディーノのプロデュースもトライアルで、録音はデイヴ・ギルモアのプライヴェート・スタジオ。スティーヴ・フェロー ニ (ds)、ロビー・マッキントッシュ (g)、メル・コリンズ (sax) らが参加している。 |
● 秋本奈緒美『POISON21 +1』![]() | 今は女優イメージが強い秋本奈緒美が、84年に発表した5枚目。ニューエイジ・ロマンティック・ジャズというコピーの下、マライア勢のバックアップによるスタンダード・ジャズの尖鋭カヴァーでデビューしたが、既にココではそのフォーマットから離脱。笹路正徳、佐藤博、西村昌敏のアレンジで、自ら作詞にも挑戦している。<Telepathy>は佐藤の<Sweet Inspiration>に本人が詞を乗せたエレクトロ・ファンク。同じく佐藤アレンジ<TRICKY>も、海外で人気が高い。ボーナス曲<ジェントルじゃいられない>はアルバム未収シングル曲で、クルマのイメージ・ソング。 |
● MINAKO OBATA『TRUE PEACE OF MIND +1』![]() | ソウル、ジャズ、ゴスペルなどに影響を受け、95年にデビューした実力派の2nd。前作同様カラパナのケンジ・サノ制作で、全曲L.A.録音。多くが彼女自身の作・共作で、スティーヴィー・ワンダー<Creepin>、ジャズ・スタンダード<All Of Me>をカヴァー。主要アレンジを担うビル・キャントスが2曲提供する。ビル・チャンプリンがデュエット、ジェイ・グレイドンがギター・ソロで参加。他にもデヴィッド・ガーフィールドらカリズマの一派、飯島真理の当時のご主人ジェイムス・スチューダー (kyd)、元カラパナのマイケル・パウロ (sax)、再編スティーリー・ダンなどで知られるフレディ・ワシントン (b) らの名も。ボーナス曲は、新録ソウル・オムニバス『JVC SOUL ALL STARS』(96年)収録のスティーヴィー・カヴァーで、演奏はバンド・オブ・プレジャー。 |
どうぞお見逃しなく〜!