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山下達郎 RCA / AIR YEARS Vinyl Collection、最終リリースとなる『IT'S A POPPIN' TIME』と『GREATEST HITS!』、当然のごとく我が家にも。あ、買ったのは今回も相方ですが…。『IT'S A POPPIN' TIME』は、かつて相当に聴き込んだ2枚組ライヴ・アルバム。でも久しぶりに改めて聴き直してみて、最近のタツローさんのライヴとは結構違うよな〜、と。もちろんパフォーマンスの充実度、完成度の高さは、今も昔も変わらない。でもそのベクトルというか、聴かせどころ・見せどころがちょっと異なるのである。

それは01年のリマスターCD再発時に、達郎さん自身がライナーノーツに書いていて(今回も補筆の上で掲載)。曰く、“いわゆる「歌もの」のアルバムではなく、インプロヴィゼーションをメインに据えたものにしようと考えていた” そう。もちろんそれは当時のバンド・メンバー:坂本龍一 (kyd), 村上ポンタ秀一 (ds), 岡沢章 (b), 松木恒秀 (g) というジャズ系のセッション・ミュージシャンが付いていたから。そのリズム・セクションに土岐英史 (sax), 吉田美奈子/伊集加代子/尾形道子(back vo) を加えたのが、この時の六本木ピットインの出演メンバーになる。

当時はまだ全国ツアーどころか、ろくにライヴ自体が開催できなかったタツローさん。この後、青山純&伊藤広規がリズム隊に固定化し、ヒットが出て大きなツアーができるようになり、ライヴのあり方も徐々に変化していった。『MELODIES』からはすべての歌詞を自分で書くようになり、音楽の幅を広げるために一人多重録音が増加。それゆえライヴ・パフォーマンスも、『...POPPIN' TIME』時のインプロヴィゼーション主体から歌モノへ回帰していく。2作目のライヴ『JOY』は、ちょうどそうなっていく過渡期のシロモノだ。そして近年のライヴでは、中盤に披露される初期楽曲でメンバーのロング・ソロをフィーチャー。『...POPPIN' TIME』のようなライヴ・アレンジはそこで聴かせるだけで、ほとんどの楽曲はスタジオ・ヴァージョンの再現に終始している。

でもそれもまた、いつどこで観ても同じクオリティのライヴ・ショウを、という氏のポリシー。でもジャズ寄りだった『...POPPIN' TIME』の頃のパフォーマンスを生で観たかった、と思っている自分には、もう何度ライヴを観ても、ホンの小さな引っ掛かりが残ってしまう。コロナ以降、チケット争奪戦が激しさを増すようになって、どうもライヴ参戦への熱意が薄らいでしまっているのも、その辺に原因があるのかな…(一応、応募はするが抽選に当たったためしがない) そんなコトを思いながらの、久々に聴く『...POPPIN' TIME』だった。

『GREATEST HITS!』は、RCA / AIR時代唯一の本人監修によるベスト・アルバムというコトで、当時の新曲だった<あまく危険な香り>、リレコの<FUNKY FLUSHIN'>、<Ride On Time>のシングル・ヴァージョンというお楽しみアリ。<BOMBER>のイントロS.E.なし、<SOLID SLIDER>がショート・ヴァージョンというのも、物足りなさを感じつつ、何処か新鮮に感じたものだ。CD化の際に追加収録されていた<Love Space>と<Sparkle>は、当然ながら今回は未収録。発表時の82年では、<Sparkle>もまだ今ほどの絶対的存在感を持ち得てなかったのだ、と改めて。